2023年3月22日に国土交通省が発表した公示地価では、1月1日における住宅地や商業地などの全国平均が前年比1.6%上昇したことがわかりました。リーマンショック前の2008年以来の上昇率を記録しました。
コロナ禍での経済鈍化からの回復や訪日客数が戻りつつあることより商業地や観光地の上昇率が目立ちました。三大都市圏、とりわけ東京都の中央区・千代田区・港区3区の公示地価は3年ぶりの上昇率を記録しました。また、日本の不動産は低金利で購入できるために割安だと考えられていることから、投資家からも人気でコロナ禍でも魅力的な投資対象でした。公示地価上昇の背景にはこのような要因が考えられています。
公示地価とは?
公示地価とは国が調べた土地の価格を指します。土地の価格は様々な要因によって左右されますが、市場原理が働くことによってバブル期のような乱高下が起こり、適切な価格で評価されなくなる可能性があります。それを防ぐためにも1969年に地価公示法が施行され、一般の土地の取引を公正に、かつスムーズに行うことができるようになりました。毎年ほぼ同じ場所で公示地価を評価しているため、地価変動がわかりやすいというメリットがあります。
公示地価は相続税にも影響する
公示地価の上昇は相続税にも影響することをご存知でしょうか?土地の価格を評価する際には様々な基準があります。その中でも不動産にかかる相続税は路線価を基準として算出されています。路線価は毎年7月に発表され、公示地価の80%の価格となります。それゆえに今年3月に発表された公示地価の上昇に伴って路線価が上昇し、相続における宅地評価額も高まります。
公示価格(公示地価) | 路線価 | 固定資産税評価額 | |
発表機関 | 国土交通省 | 国税庁 | 市区町村 |
発表時期 | 毎年3月 | 毎年7月 | 毎年4月 |
基準日 | その年の1月1日 | その年の1月1日 | 1月1日 (3年ごとに見直し) |
目的 | 土地取引の指標 | 相続税、贈与税の算出基準 | 固定資産税、不動産取得税などの算出基準 |
評価水準 | ー | 公示価格の80% | 公示価格の70% |
相続における宅地の評価には2つの方式があります。路線価方式と倍率方式で、どちらの方式を採用するかは該当する宅地の所在地によって国税庁が指定しています。
路線価方式とは?
路線価方式では、宅地が接する道路の1平方メートルあたりの価格(路線価)に、該当する宅地の土地の形や奥行き、間口の広さなどを鑑みたうえで調整して評価します。
具体的な計上方法として、
- 固定資産税課税明細(納税通知書)や登記簿謄本から相続対象となる宅地の面積を把握する。
- 国税庁のホームページより該当地の路線価を調べる。
- 1.での面積と2.での路線価を掛け合わせた金額が相続税評価額となる。
この概算からさらに細かな指標を加味しながら実際の評価額を算出するのが、路線価方式となります。
倍率方式とは?
倍率方式とは路線価が定められていない地域にある宅地を評価する方法です。ここでは、先の表での右端にある項目「固定資産税評価額」が指標となります。
具体的な計上方法として、
- 固定資産税課税明細(納税通知書)や登記簿謄本から相続対象となる宅地の固定資産税評価額を把握する。
※相続人の死亡した年が属する年度の固定資産税評価額であることがポイントです。 - 国税庁のホームページの財産評価基準書から倍率を調べる。
- 固定資産税評価額と倍率をかけ合わせた金額が相続税評価額となる。
土地の相続税評価額計算は、相続税申告のフローの中でも難しい
コロナ禍で注目されていた日本の不動産ですが、規制が緩和されて経済活動やインバウンド需要が回復しつつあります。もとより注目されていた不動産はさらに市場からの評価が高まり、それに伴って公示地価も上昇しつつあります。とりわけ東京都では上昇率が顕著です。
土地の相続税評価額の計算は、相続税申告に関する一連のフローでも難しい部類にあたります。複雑な土地を所有している場合はここで紹介した評価方式のほかにさらなる専門知識が要求されます。申告に漏れがあると追徴課税などのペナルティが発生することがあり、一人きりで申告をするよりも頼れる税理士に相談するのがベストでしょう。佐久間会計事務所には2020年に開業50周年を迎え、膨大なノウハウがございます。相続税に関するささいなことからも、ぜひ気兼ねなくご相談ください。
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