法人が納める法人税は、個人の税金に比べて多額となりがちです。会社員であれば毎年ほぼ一定金額の税額ですが、会社は年毎に売上が変わるため、業績に税金が連動します。
「なるべくそのような不安定さを回避したい」と思うのが経営者の本音でしょう。ここでは代表的な法人税の節税方法について解説します。
法人税について知っておきたいポイント
法人税は何に対して課税されるのかというと、会社の事業で発生した収益(「法人税」)や、会社が所在する自治体のインフラなどの行政サービスの費用(「法人事業税」)、そして個人と同じように会社が存在することで課せられる税金(「法人住民税」)です。
これらが「法人3税」と呼ばれる代表的な法人税の種類です。さらにその中で法人税は国に納める「国税」にあたり、法人事業税と法人住民税は地方自治体に納める「地方税」に分類されます。
法人税の算出方法は、所得税と同様に「課税所得×税率」が基本です。事業年度で発生した収益から経費や控除などを差し引いた金額に税率が掛けられます。そして、原則として法人は事業年度末の翌日から2ヶ月以内に法人税を納めなくてはなりません。
また、法人税においては「損金」「益金」といった考え方があります。所得税では「所得=総収入額ー必要経費」であるものの、法人税では「所得=益金(売上や売却益など)ー損金(売上原価や販管費、損失など)」と定義されています。
会計の観点からは利益として含まれていた項目が、税制では損金として見なされることもあります。また、逆のパターンもあります。(いわゆる「損金算入」「益金不算入」)
法人税の代表的な節税方法
法人税の節税では下記の3つの考え方を意識しましょう。課税対象となる所得部分を減らすことができれば、節税につながります。
- 損金を増やす
- 益金を減らす
- 特別控除制度を利用する
節税方法1:福利厚生を強化する
社員旅行や健康診断制度を取り入れて経費を増やすことが節税につながります。しかし、社員旅行や健康診断が経費と見なされるためには条件があり、社員旅行の場合は下記を満たせば経費として見なされます。
- 4泊5日以上の社員旅行
- 会社負担額が一人あたり10万円以内
- 社員の参加率
- 社員旅行の対象は社員全員であること
福利厚生が整っていることは求職者にとっても魅力的といえるでしょう。しかしながら、節税対策の一つとして社員旅行を導入するためには、会社の業務が円滑だったりと、普段からの努力が大切といえます。
節税方法2:社宅を活用する
社員のための社宅を用意したり、経営者の自宅を社宅とみなし経費として計上する方法です。なお、社宅扱いとなるのは下記の条件が必要です。
- 会社名義の賃貸物件であること
- 入居する経営者や従業員から一定の賃料を受け取る
この方法は従業員が多い企業であるほど節税効果が高いといえます。また、法人税の節税だけでなく、給与から家賃が天引きされることによって個人の所得税節税にもつながります。経営者のみならず従業員にとってもお得です。
節税方法3:役員報酬や退職金を損金として計上する
法人では、経営者は給与ではなく役員報酬を受け取りますが、役員報酬や退職金は一定の条件を満たせば損金として計上できます。役員報酬が損金として見なされるのは下記の条件下です。
- 毎月同額の役員報酬であること(定期同額給与)
- 事前確定届出が提出されていること
- 業績連動給与の場合は「有価証券報告書」に記載されていること
また、条件を満たしたうえで法人税を減税できたものの、役員報酬を増やしたことによりトータルの納税額が増えてしまうケースもあります。このような問題を防ぐためにも、役員報酬を利用した法人税節税を行う際は、事前に税理士などの専門家に相談することをおすすめします。
節税方法4:赤字を繰り越す
過去の赤字を翌年以降に繰り越す制度を利用することで、たとえ黒字の事業年度であっても赤字分と相殺して法人税の納税額を減らせます。一般的に個人事業主の場合は、青色申告をしていれば過去3年間分の赤字を繰り越せますが、法人であれば最大10年間の繰り越しが可能です。
なお、この繰り越し制度を利用できる条件としては下記で、期間の長さを除けば個人事業主の場合と同様です。
- 10年以内に発生した欠損金(赤字)であること
- 青色申告を提出した年の欠損金であること
- 毎年確定申告をしていること
- 帳簿を保管していること
また、この制度においては、前年度は黒字で今年度は赤字といった場合、税務署への申請によって前年度払い過ぎた分の法人税の還付を受けられます。それを「欠損金の繰り戻しによる還付」といいます。しかし、赤字であっても法人住民税は納めなくてはならない点は注意しましょう。
節税方法5:未払費用を損金として計上する
未払費用とは、今期に発生した費用であるものの、支払いが来期となるものです。代表的な未払費用としては通信費や決算賞与、社会保険料、社員の給与が挙げられます。決算時に未払費用を経費として計上することで課税部分が減り、法人税の節税につながります。
帳簿などの会計の証拠を残したうえでの節税を
今回のコラムで取り上げた法人税の節税方法は代表的なものですが、節税において大切なことは「際どい節税を行わないこと」「帳簿などの分かりやすい証拠を残すこと」「分からない場合には税理士に相談すること」です。
節税が目的であったとしても、常識の範囲内で行わなかった場合は税務署に疑われてしまって脱税や申告漏れといったケースがあり、今後の会社の信用にもつながります。そのようなトラブルを防ぐためにも、日々帳簿をつけたり、節税を検討する際は頼れる税理士に相談することが必要です。
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