近年、商取引では電子決済が増えてきているものの、いまだに小切手を用いる企業も少なくありません。小切手は大口での取引で多く用いられています。小切手に記載する金額は書き換えることができないため、誤った金額での取引を防げるほか、盗難リスクも低くなります。
企業で働いている際にはあまり馴染みのない小切手ですが、いざ起業するとなると商取引で必要となってきます。しかし小切手は、約束手形といった手形とは何が違うのでしょうか?ここでは小切手について知っておきたい基本的な知識について解説します。
小切手とは?
小切手は現金に代わって取引を行うことができ、主にビジネスの場にて大口取引の際に用いられます。しかし、「これは小切手です!」と小切手を作成して取引先に提示しても、取引が成立するわけではありません。
まずは銀行に当座預金口座を作らねばならず、当座預金口座を保有する銀行から小切手が発行されるのです。つまり、小切手とは銀行が発行する有価証券です。
小切手では、発行する人を「振出人」、受け取る側の人を「持参人」、小切手に必要事項を記載して相手に振り出す(渡す)日を「振出日」といいます。また、小切手は「小切手法」といった法律によって書き方や支払い方法、換金方法といった取り扱い方が決まっています。
小切手は3種類ある
小切手には3種類あり、それぞれを持参人払小切手・線引小切手・先日付小切手といいます。
・持参人払小切手
銀行に小切手を持参した人であれば誰でも換金できる小切手です。
・線引小切手
「線引」という名前通り、小切手の上部に2本線が引かれている小切手です。現金での受け取りではなく、持参人の銀行口座にそのまま振り込まれるのが特徴です。この2本線は、支払銀行と直接取引のある人や持参した人の銀行にしか換金できないことを示します。盗難リスクを防げるため、大口での取引で重宝されています。
・先日付小切手
「先日付」という名前からも推測できるように、将来の日付で振出日を指定できる小切手です。振出人の資金繰りの都合上、現在の日付よりも後に振り出したい時に利用できます。しかし、振出日について法的な効力がないために、持参人が振出日前に銀行へ換金しに行った場合は、銀行側は拒むことができません。
手形との違いは?
直接現金で取引するのではなく、間に銀行を挟む形での取引で小切手が用いられていますが、同様の取引手段として手形が挙げられます。手形と小切手の違いとして挙げられるのは、支払期日です。
小切手は振出日から11日以内であればいつでも小切手を提示して換金できます。一方で手形に効力があるのは指定日から3日以内です。また、手形では指定日を過ぎなければ現金化できない一方で、小切手は振出日が後日であっても受け取ったタイミングで現金化できます。
ちなみに、小切手には上記のような特徴があるため、簿記の知識では「小切手を受け取る=現金勘定が増える」となります。
小切手の書き方
小切手は取引銀行に当座預金口座を開設しなければ発行できません。また、法律で書き方が決まっているため、誤った書き方では処理されません。正確な書き方を知っておく必要があります。
当座預金口座の開設と支払委託に関する契約の締結を行う
小切手を振り出せるようになるためには、まず取引銀行に当座預金口座を開設し、資金を振り込む必要があります。しかし、資金が口座にある状態では小切手を振り出せず、小切手を使って支払いを行えるよう委託契約を銀行と締結しなければなりません。
契約を締結していない場合、通常は自分自身が銀行に赴いて自身の口座から相手の口座に振り込まなければなりませんが、その手間を省いてくれるのが小切手の役割となります。
支払い金額を記載する
小切手に記載する支払い金額については、アラビア数字、もしくは壱弐参といった難しい漢数字となります。また、第三者が勝手に文字を書き換えないよう、金額の頭に「¥」もしくは「金」を、金額の末尾に「※」もしくは「円也」を記載する必要があります。
書き漏れている場合には失効となりますので、新しく小切手を作成しなければなりません。なお、支払い金額の記載にはチェックライターが便利です。
振出日を記載する
振出日とは相手に小切手を渡す日のことです。空白でも小切手を振り出せますが、受け取る側としては持参できる期間が分からなくなるため、記載しておくと取引先に対しても優しいでしょう。なお、先日付小切手という種類があるように、未来の日付も記載できます。
振出人を記載、割印も忘れずに
振出人の署名は銀行に届け出ている名前と一致していなければなりません。また、同じ名前での印鑑も押印しましょう。小切手帳のミシン目にも印鑑を押印します。これにより、不正防止の役割を果たします。
裏書を記載する
小切手では、証券の表面に「裏書禁止」と表記されていない場合には、受け取った人が別の人に譲渡することができます。特定の人に小切手を振り出したい場合は、小切手の裏書として下記の内容を記載する必要があります。
- 譲渡の文言「表記金額を○○へお支払いください」
- 譲渡する日付
- 譲渡する側の住所・氏名、捺印
- 譲渡される側の名前
小切手を使って安全な取引を
近年では商取引において電子決済が主流となっているものの、やはりインターネットを介する大口の取引は不安になりがちです。
そんな中で、安全性が高い取引手段として小切手が挙げられます。銀行が介しているだけでなく、法律によって書き方や取引方法が決まっているため、他の取引よりも慎重に行いたい場合には安心して取引ができるはずです。
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