「不動産で相続税対策ができるの?」
「どんな仕組みで節税ができるのか知りたい」
相続税対策が必要な人の中には、このように考えている人もいるのではないでしょうか。
そこで本記事では、不動産の相続税評価額の算出方法と節税の仕組みを解説します。相続税対策が必要な人にとって有益な情報を記載していますので、ぜひ最後までご覧ください。
不動産の相続税評価額を土地と建物別に解説
不動産を相続税対策に活用する際には、まず相続税評価額の計算方法を理解することが重要です。相続税評価額の計算方法を把握することによって、不動産をどの程度活用することができるかがわかり、その考え方をより深く理解することができます。
不動産の相続税評価額は、土地と建物に分けて計算されるため、それぞれの詳細を見ていきましょう。
土地の相続税評価額
土地の相続税評価額を算出する際には、路線価方式か倍率方式を用いることになります。それぞれの概要を確認していきます。
路線価方式
路線価とは、道路に接する土地の1㎡当たりの金額を示し、路線価方式では「1㎡当たりの金額×土地の広さ」で土地の評価額が計算されます。例えば、路線価が1㎡当たり15万円で土地の広さが100㎡ならば、土地の評価額は1,500万円です。
しかし、複数の道路に面する土地や形状によっては、以下の加算率が考慮されて土地の評価額が決まります。
- 側方路線影響加算率
- 二方路線影響加算率
これらの加算率を用いた算出方法を知りたい人は、国税庁のページを確認するか、税理士に相談してみましょう。
倍率方式
倍率方式とは、路線価が設定されていない地域の評価手法を指し、算出方法は「固定資産税評価額×倍率」となります。
固定資産税評価額とは、不動産が所在する市区町村が設定した価格を指し、この評価額は3年ごとに見直されます。例えば、固定資産税評価額が5万円で倍率が48の場合、土地の評価額は240万円です。
倍率方式に基づく相続税評価額の計算では、先述した側方路線影響加算や二方路線影響加算は適用されないことになります。倍率地域における倍率を知りたい人は、国税庁のページを確認しましょう。
建物の相続税評価額
建物の相続税評価額は、通常は固定資産税評価額と同じです。しかし、賃貸物件の場合は借家権割合によって評価額が変動します。借家権割合とは、賃貸物件の相続税評価額を計算する際に使用される割合です。
賃貸住宅の評価額は「建物の固定資産税評価額×(1-借家権割合)」で算出されます。例えば、令和5年度の東京都の借家権割合が30%であるため、賃貸物件の建物の評価額は「建物の固定資産税評価額×70%」です。
具体的な例を挙げると、固定資産税評価額が2,000万円の賃貸物件を所有している場合、建物の相続税評価額は1,400万円になります。
不動産で行える節税の仕組み
不動産で行える節税対策は「特定居住用宅地等」と「貸家建付地」です。それぞれの対策方法を理解することで賢く節税ができるでしょう。
特定居住用宅地等
特定居住用宅地等とは、相続が開始される直前に被相続人が居住していた土地のことです。以下の条件を満たす場合、面積が330㎡までの範囲で評価額が80%減額される制度を受けられます。
- 被相続人の配偶者が相続する場合
- 被相続人と同居していた親族が相続する場合
- 被相続人と生計を共にしていた親族が相続する場合
参考:国税庁
具体的な例を挙げると、土地の面積が350㎡で路線価が1㎡あたり15万円の場合、特定居住用宅地等に該当しないと土地の相続税評価額は5,250万円です。
しかし、特定居住用宅地等に該当すれば、以下のように評価されます。
- 330㎡までの部分:330㎡×15万円×(1-0.8)=990万円
- 残りの20㎡:20㎡×15万円=300万円
したがって、上記の例では土地の相続税評価額は1,290万円となり、特定居住用宅地等の制度を活用することで、相続税評価額が3,960万円減少します。
ただし、贈与によって取得した土地については特定居住用宅地等の制度を利用することはできません。特定居住用宅地等の制度を利用するか、贈与を行うかについては、税理士に相談するのがおすすめです。
貸家建付地
貸家建付地とは、貸家を立てて貸し出している場合の土地を指します。
以下の条件を満たすと、この土地の相続税評価額を減少させることができます。
- 各独立部分が課税時期前に継続的に賃貸されてきたものであること。
- 賃借人の退去後速やかに新たな賃借人の募集が行われ、空室の期間中、他の用途に供されていないこと。
- 空室の期間が、課税時期の前後の例えば1か月程度であるなど、一時的な期間であること。
- 課税時期後の賃貸が一時的なものではないこと。
引用:国税庁
貸家建付地の場合、相続税評価額は次の式によって算出されます。
貸家建付地の価額 = 自用地としての価額 - 自用地としての価額 × 借地権割合 × 借家権割合 × 賃貸割合
引用:国税庁
具体的な例として、土地の評価額が2,000万円で建物の評価額が1,000万円の賃貸住宅を購入する場合を見てみましょう。
賃貸住宅を購入することで、以下の相続税評価額となります。
- 土地:2,000万円×約80%=1,600万円
- 建物:1,000万円×70%=700万円
- 土地+建物=2,300万円
多くの地域で、借地権割合が60%もしくは70%、借家権割合が30%となります。したがって、上記の例では土地の評価額は約80%として算出しています。現金預金の場合は100%評価が適用されるため、3,000万円の現金を相続するよりも同じ金額で賃貸住宅を購入することで、700万円分の節税効果が期待できます。
まとめ
本記事では、不動産の相続税評価額の算出方法と節税の仕組みを解説しました。不動産で相続税対策をするためには、相続税評価額の算出方法やどのような仕組みで節税ができるのかを把握することが大切です。
ご自身では判断ができない場合は、税理士などの専門家に相談しましょう。
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