贈与税には時効がある?ほぼ成立しない理由や具体的な事例とは?

税務情報

相続税の節税で行われる対策として最もオーソドックスなのが生前贈与です。生前贈与では、子や孫への年間110万円までの贈与が非課税となり、110万円を超えると贈与税が課税されます。

贈与を行った際には申告しなければなりませんが、所得税や相続税などの一般的な税金と異なり、個人間でのやりとりのため、形跡を隠すことができそうですよね。

そのため「わざわざ申告しなくてもバレないのではないか?」と考えてしまいそうですが、実際にはそう上手くいきません。

今回は「もし贈与税の申告をしなかったらどうなるのか?」という疑問にお答えします。

基本的に贈与税には時効がある

基本的に贈与税には時効がある

贈与税とは、1年間のうちに110万円以上の贈与を受けた際に課税されます。一般的に贈与のあった翌年の3月15日までに申告しなければならず、それより遅くなってしまうと通常の税金と同様にペナルティが課されます。

しかし、なかには「個人間のやりとりぐらいバレないだろう」といった意図であったり、そもそも贈与税がかかるということさえ知らないで贈与が行われることもあります。いわゆる「脱税」です。

しかし、このような贈与税の脱税においては、もちろんペナルティが課されるものの時効が存在します。贈与があった翌年の3月16日(申告期限日の翌日)を起点として6年後に時効が成立し、たとえ贈与税を申告していなくてもさらなる課税となる可能性は低くなります。悪質な場合の時効は7年後までです。

贈与税の時効が成立しない場合

贈与税の時効が成立しない場合

贈与税の時効は滅多に成立せず、どちらにせよ税務署にバレてしまうケースがほとんどです。では、どのような場合なのでしょうか?

贈与と思いきや相続税が課税される

贈与税には時効がありますが、そもそも贈与税と思って贈与者が行ったことが贈与ではなかったというケースもあります。「名義預金」と呼ばれるケースがその代表例で、たとえば子や孫名義で祖父母などが資金を積み立てている場合などが挙げられます。

つまり、通帳の名義が亡くなった人と異なるケースで、本人からすれば贈与となっていたものの、亡くなったのち、その人の財産として見なされ相続税の対象となります。

このケースについてさらに細かく見ていきましょう。贈与においては民法549条にて下記のように定められています。

「贈与は、当事者の一方が自己の財産を無償で相手方に与える意思を表示し、相手方が受諾をすることによって、その効力を生ずる」

参考:法務省

このように贈与の成立については「贈与する側の意思表示」と「贈与を受ける側の承諾」が必要となります。そのため、先ほど述べたような名義預金といったケースは、贈与した人(と思い込んでいる側)が相手の意思に関係なく預金を管理していたということになり、贈与として定義されません。

また、名義預金にかかわらず、認知症などで贈与者の認識能力が乏しかったり、贈与契約書がないケースも贈与として認められない可能性があります。

10年以上前に贈与がさかのぼるケースも課税される可能性

贈与税の時効は悪質なもので7年とお伝えしましたが、なかには時効となっても課税されるケースもあります。たとえば父親が子に1,000万円の贈与を行ったものの、子は贈与税の申告を怠り、その10年後に父親が亡くなった場合です。

この場合は時効を過ぎているものの、万が一贈与契約書を作っていなかった際は税務署の調査により相続税の申告が必要となる可能性があります。とはいえ、贈与契約書を作成していれば時効が成立するのでしょうか?脱税目的であれば成立するとは限りません。

なぜ贈与税の申告漏れは税務署にバレてしまうのか?

なぜ贈与税の申告漏れは税務署にバレてしまうのか?

贈与税の時効は7年で、なおかつ個人間での資産のやり取りといえど、なぜ大半は成立しないのでしょうか?贈与税の申告漏れは、贈与者が亡くなった後の相続税の税務調査で判明することが多い傾向にあります。

相続税の税務調査では被相続人だけでなく相続人の資産状況も調査するため、その過程で判明するようです。さらに税務調査では、税務署員が不明に思った点について事細かに質問があり、不明な財産について「これは贈与税か?相続税か?」と確認があります。

贈与税は相続税の補完税と呼ばれており、生前贈与の検証が相続税の税務調査において不可欠だとする税務署員は多いです。相続税はすべての被相続人が対象となるわけではなく、富裕層など資産を多く持った人が対象ですから「あらかじめ何か生前対策をとっているに違いない」と検討がつくでしょう。

そのため、税務署員も生前対策のひとつとして有名な贈与に関しては嗅覚を鋭くさせています。

申告漏れが判明したらすみやかに申告を

申告漏れが判明したらすみやかに申告を

贈与税には時効があるものの「時効があるからバレなければ大丈夫」といった気持ちで申告を逃れるのはリスキーです。どちらにせよ税務署の厳しい税務調査が入るため、申告漏れが発覚する可能性が高いです。

その一方で110万円を超えた贈与には課税されることを知らず、いわゆる故意でない申告漏れというケースも……。そのような場合にはペナルティが課されますが、なかには40%の重加算税が課税されるケースがあるため気をつけましょう。

もし、贈与税の申告が漏れていたことに気づいた場合は、所轄の税務署や信頼できる税理士に相談し、すみやかに申告しましょう。

関連記事

特集記事

コメント

この記事へのコメントはありません。

TOP