相続税はどのように計算する?基礎控除など各種控除を解説

相続

相続税の負担は大きいため「発生するのか」「金額はいくらくらいになりそうか」は生前から確認しておきたいところです。相続税計算上、税額を減らせる大きなポイントのひとつに「控除」があります。

基礎控除を始めとして、配偶者の税額控除などが適用できれば大きく税額を減らすことができます。この記事では、相続税の計算方法および基礎控除の概要、基礎控除以外の各種控除の中で利用されるケースの多い制度を紹介します。

相続税の計算方法

相続税の計算方法

相続税は、一般的に以下の順序で計算します。

(1)各相続人の課税価格の算出

概要は以下のとおりです。

  • 主に相続または遺贈で取得した財産の価格を計算
  • みなし相続等で取得した財産、相続時精算課税に係る贈与財産があれば加える
  • 借金などのマイナス財産があれば差し引く

(2)相続税の総額計算

各相続人の課税価格を合計して、課税価格の合計額を計算します。

(3)基礎控除額を差し引く

基礎控除額は「3,000万円+(600万円×法定相続人の数)」で計算されます。

(4)各法定相続人の取得金額を計算

基礎控除額を差し引いた金額を、各法定相続人が法定相続分に従い取得したものとして、それぞれの取得金額を計算します。

(5)税率をかける

法定相続人ごとの取得金額に相続税の税率をかけます。

(6)税額を合計する

上記(5)の結果を合計して、相続税の総額を計算します。

(7)各人の相続税額を算出

相続税の総額を、財産を取得した人の課税価格に応じて割り振ります。

(8)各人の納付税額を算出

各人に各種控除が利用できる場合は差し引いて、最終的な納付税額を算出します。2割加算の対象となる場合は、ここで加算されます。

さまざまな過程がありますが、相続税の金額に大きな影響を与えるのは主に以下のポイントです。

  • 課税価格の算出
  • 基礎控除の計算
  • 各種控除の適用

この記事では主に基礎控除、各種控除について解説していきます。

基礎控除額の算定方法 | 法定相続人がポイント

基礎控除額の算定方法 | 法定相続人がポイント

基礎控除額の計算式は、以下になります。

「3,000万円+(600万円×法定相続人の数)」

このため、法定相続人の数が多いほど基礎控除額は大きくなります。まずは法定相続人を確定させることがポイントとなるでしょう。基礎控除額の計算における法定相続人は「民法に基づく法定相続人」です。

相続放棄をしていても、法定相続人であれば計算上カウントする点に注意が必要です。配偶者がいる場合は必ず法定相続人となります(内縁関係の場合は除く)。それ以外の法定相続人は以下のとおりです。

  • 第一順位:直系卑属(子、孫)
    子がいれば必ず相続人になります。子が死亡していれば、孫が相続人になります(代襲相続)。
  • 第二順位:直系尊属(父母、祖父母)
    第一順位にあたる方がいない場合に相続人になります。
  • 第三順位:兄弟姉妹(甥、姪)
    第一順位、第二順位の方がいない場合に相続人になります。

また、養子縁組をした養子も法定相続人としてカウントされ、基礎控除額を増やすことが可能です。ただし無制限ではなく、原則として基礎控除額の計算に含めることができる養子は、被相続人に実子がいる場合は一人まで、実子がいない場合は二人までという制限があります。

租税回避の目的がない場合、例えば配偶者の実子が被相続人の養子になったケースなどは、上記人数制限からは除かれます。

基礎控除の他に相続税の計算に適用できる各種控除

基礎控除の他に相続税の計算に適用できる各種控除

基礎控除の他に、税額を減らせる税額控除があります。主なものは以下のとおりです。

  1. 配偶者の税額控除
  2. 未成年者控除
  3. 障害者控除

(1)配偶者の税額控除

配偶者の相続税課税価格が以下のどちらか多い金額までは、相続税がかからない制度です。

  • 1億6,000万円
  • 配偶者の法定相続分相当額

遺産は相続人の遺産分割協議で自由に配分できます。法定相続分以上に相続しても、1億6,000万円までは相続税がかかりません。ただし、主に以下の点に注意が必要です。

  • 相続税の申告をすること
  • 申告期限までに遺産分割が完了していること

完了していない場合「申告期限後3年以内の分割見込書」を添付して申告すれば、3年以内に分割が確定した分は控除の対象となります。

(2)未成年者控除

相続人が未成年の場合は、以下の金額を税額から控除できます。

「(18歳-相続開始時の年齢)×10万円」

1年未満の期間があれば、切り捨てて計算します(例えば14歳9ヶ月→14歳で計算)。

未成年者の相続税額から全額引ききれなかった場合は、未成年者の扶養義務者の相続税から引くことが可能です。

(3)障害者控除

相続人が85歳未満の障害者の場合は、以下の金額を税額から控除できます。

「(85歳-相続開始時の年齢)×10万円」

未成年者控除と同様に、1年未満の期間があれば、切り捨てて計算します。障害者の相続税額から全額引ききれなかった場合は、障害者の扶養義務者の相続税から引くことが可能です。

まとめ | 相続税の計算は複雑なため税理士への依頼がおすすめ

まとめ | 相続税の計算は複雑なため税理士への依頼がおすすめ

以上、相続税の計算方法および基礎控除額と、主な税額控除について解説しました。控除は相続税の金額を大きく減らせる可能性があるため、理解しておきましょう。

加えて、相続税の税額は課税価格に大きく影響されます。小規模宅地の特例を始めとして、相続財産の評価を減額できる制度があるため、特に評価が必要な不動産については詳細な検討が望ましいでしょう。

相続財産の評価や相続税の計算、申告は複雑です。正確な申告をし、また、税額を少しでも減らせる可能性を検討するためにも、税理士への依頼がおすすめです。

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