近年ふるさと納税が普及し「寄付をすると節税になる」というイメージがあるかもしれません。寄付をすると、所得税や住民税、相続税、法人税が節税になるケースがあります。ただし、節税になる寄付先は限られており、さまざまな要件があるため注意が必要です。
この記事では、寄付をすると節税になる仕組み「寄付金控除」の概要を紹介します。また所得税と相続税の寄付金控除の制度概要についてそれぞれ説明します。個人で寄付をして節税をしたいと考えている方は、参考にしてください。
寄付金控除とは?節税効果はどのくらい?
寄付金控除とは、特定の寄付をすると税金を減らすことができる制度です。
概要と注意点は以下のとおりです。
- 寄付金控除の対象となる寄付は限定されている
- 寄付金控除の金額には上限がある
- 対象となる寄付金を支払うことが前提となるため、税金の支払金額は減っても寄付金として支払う分は資金が流出する
いくら寄付をしても、税金を支払っていなければ節税になりません。また、寄付時には支払が生じる上、控除は上限があるため税額全額は控除できません。トータルでみて、資金はマイナスになります。
所得税を減らせる寄付金控除は、一般の寄付金とふるさと納税があります。両者の主な違いは、ふるさと納税は住民税の税額控除の基本控除・特例控除も受けられる点です。詳しくは後述します。
また、相続時に相続財産から寄付をすると、寄付部分は相続税の課税対象となりません。以下、所得税と相続税の寄付による節税制度について、それぞれ概要と計算式を紹介します。
所得税の寄付金控除の概要
所得税の寄付金控除は「特定寄付金」を支出した場合に所得控除を受けられるものです。
特定寄付金の要件
特定寄付金は、主に下記の寄付先であるという要件があります。
- 国・地方公共団体
- 公益社団法人、公益財団法人等
- 社会福祉法人
- いわゆる認定NPO法人等
詳しくは国税庁タックスアンサーNo.1150を参照ください。
寄付金控除の計算方法
【所得税の寄付金控除の計算方法】
寄付金控除額=下記のいずれか低い金額-2,000円
- 年間の特定寄付金の合計額
- その年の総所得金額の40%
実際の節税金額は、寄付金控除の金額にご自身の所得税率をかけた金額になります。
【税額控除の計算方法】
以下のものについては、所得控除に代えて税額控除を選択することができます。税額控除は、その金額がそのまま節税金額となります。
政治活動に関する寄附金
税額控除の金額=(年間の寄付金の合計額-2,000円)×30%
認定NPO法人等に対する寄附金、公益社団法人等に対する寄附金のうち一定のもの
税額控除の金額=(年間の寄付金の合計額-2,000円)×40%
また、寄付金の中でも、ふるさと納税や都道府県・市区町村が条例で指定する寄附金などは住民税の税額控除が受けられます。
注意点
所得税の寄付金控除を受けるには、確定申告書に証明書(受領証など)を添付するか提示する必要があります。証明書は寄付先から交付されるものであり、ないと控除が受けられないためしっかり保管しておきましょう。
ふるさと納税と一般の寄付金との違い
ふるさと納税は地方公共団体への寄付金であり、所得税の寄付金控除(所得控除)が受けられます。他の一般寄付金との違いは、住民税の控除も受けられること、返礼品があるケースが多いことです。ふるさと納税の住民税控除は、基本控除だけでなく特例控除も受けられ、他の寄付金よりも節税になります。このため多くの方が利用しています。
相続税の寄付金控除の概要
相続税の寄付金控除は、相続人が相続した財産から国などに対して寄付をすると、寄付分については相続税の課税対象としない制度です。また同時に、要件に当てはまれば相続人の所得税や住民税を節税することもできます。
主な要件は以下のとおりです。
- 相続税申告期限までに寄付をすること
- 相続税申告書に明細書を添付すること
- 寄付先は、国・地方公共団体・特定の公益法人などに限る
- 遺言による寄付は対象外となる
- 相続財産をそのままの形で寄付すること(不動産を売却して現金を寄付するなどの場合は控除の適用対象外)
この他にも細かい要件があるため、適用する場合は確認が必要です。
節税できる金額は、本来寄付しなければその財産にかかる相続税の金額です。計算上は、寄付部分を相続税の対象から除く形になります。
なお、相続税の寄付金控除は、ふるさと納税も適用対象です。この場合も通常の寄付と同様に、相続税の申告期限までにふるさと納税をして、相続税申告書に明細書を添付する必要があります。
ふるさと納税の返礼品は一時所得に該当します。返礼品の額(寄付の額ではありません)が特別控除額50万円を超える場合は一時所得が課税されるため、注意が必要です。
まとめ | 寄付をすると節税になっても手取り自体は減る
以上、寄付による節税について、所得税と相続税に関する制度概要を紹介しました。寄付した金額部分は資金が流出し、節税目的だけではかえって財産を減らすことになります。目的をもった寄付をおこない、その結果節税につながるという考え方をしておくと無難でしょう。
また、寄付金控除を受けたい方は、控除の対象となる寄付であるかを事前に確認しておくことが大切です。計算方法や、節税効果の詳細を確認したい方は、事前に税理士への相談をおすすめします。
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