会社の業績が良かった年は、決算賞与として普段のボーナスとは別に賞与を支給することがあるのではないでしょうか?そのほうが社員としても嬉しいし、節税にもなります。しかし、時によっては決算賞与を支給することがデメリットとして働いてしまうこともあるので注意が必要です。
そもそも決算賞与とは?ボーナスとの違い
決算賞与とは、会社が事業年度の業績に応じて支給する賞与のことです。毎年夏や冬に定期的に支給されるボーナスとは異なり、その事業年度の業績によって支給額が変わる臨時的な賞与として見なされています。
また、決算賞与の支給時期としては、法人税法施行令72条の3第2号にて決算月から1ヵ月以内と定められています。そのため、例えばとある会社の決算月が3月である場合、決算賞与の支給は翌月の4月末までとなります。法人税法上に損金算入するための要件があるため、そのほとんどが決算月から1ヵ月以内に支給されます。
ボ―ナスは、業績が悪化しない限り、毎年決まった時期に基準に基づいた金額が支給されます。一方で決算賞与は、その事業年度でどのくらいの業績を上げられたのかであったり、どの社員にどのくらい支給するのかであったり……と支給額が異なる傾向にあります。また、あくまでも賞与であるため、給料とは異なり、決算賞与が支給されないケースもあります。
そして、決算賞与を支給することの最大のメリットとしては、社員のモチベーションアップといえるでしょう。業績に連動した賞与が出れば、「仕事を頑張ればもっともらえる!」という気持ちになるでしょう。社員のやる気に火がついて会社の業績が上がれば、翌年の決算賞与がさらに増え、業績アップして会社の知名度も高まることでしょう。社員にとっても会社にとってもメリットが大きいのが決算賞与なのです。
決算賞与のメリット:節税効果がある
決算賞与のメリットは、社員のモチベーションアップのほかにも節税効果が見込めるなどさまざまあります。
会社の業績が好調で利益も過大であり、支払う法人税が予想以上になってしまう場合には、決算賞与を支給することで節税するケースがあります。
たとえば、利益が1,000万円の会社が200万円の決算賞与を支給する場合、税率30%とすると、決算賞与を支給しない時の税金は300万円です。しかし、決算賞与を200万円支給すれば利益は800万円となり税金は240万円となるため、60万円の節税効果があります。
しかし、ある一定の要件を満たしていなければ、決算賞与を損金扱いすることができません。
決算賞与を損金扱いするには?
所得税は、「益金ー損金=所得」によって算出された所得に課税されます。多くの節税手段では損金に含まれる金額を増やすことによって行われます。つまり、決算賞与を損金として計上できれば課税される所得が減るので、結果的に法人税を節税できます。
決算賞与を損金算入するためには、法人税法施行令第72条の3第2号に定められている3つの要件を全て満たす必要があります。
- その事業年度内に決算賞与の支給額を各人別かつ同時期に支給を受ける全ての使用人に通知していること。
- 1で通知した金額を、通知した全従業員に対し決算日翌日から1ケ月以内に支払っていること(未払も可能)
- 決算において未払賞与として会計処理をしていること。
決算賞与のデメリットとは?
社員のモチベーションアップにも繋がり、会社の節税にも繋がる決算賞与ですが、もちろんデメリットもあります。
デメリット:支出が伴う
決算賞与は、予想以上に業績が好調である時に節税対策として有効です。というものの、実際に支出を伴うものであるため、社員に支給した分だけ利益が減って会社に資金を留保することはできなくなります。決算書上では利益が出ていても、決算賞与を支給し過ぎると、税金の申告ができなくなってしまったり、資金不足になってしまうこともあるため、後々困らないようにするためにも、会社の資金計画からどのくらい支給するべきかは入念に考えておきましょう。
デメリット:社会保険料負担が増える
決算賞与を支給すると、その分健康保険料や社会保険料等の社会保険料の負担も増えます。基本的に社会保険料は会社と従業員で折半するので、社員だけでなく会社の社会保険料の負担額が増えることになります。ただ単に法人税の節税手段として決算賞与を導入するのではなく、社会保険料の負担などのことも考えた上での支給を検討しましょう。
デメリット:社員のモチベーションが落ちることも
決算賞与を支給すると従業員のモチベーションも上がるでしょう。しかしながら、会社はチームプレイです。誰かが頑張って仕事をしたとしてもその反対で仕事ができず足を引っ張る人もいます。頑張っている人に決算賞与を支給すればモチベーションがアップするかもしれませんが、仕事ができず足を引っ張る人に決算賞与を与えないとなるとさらにモチベーションが下がっていくでしょう。
決算賞与だけで社員のモチベーションを管理することは難しいといえます。また、どのような条件で決算賞与が支給されるのか、あらかじめ社員に伝えておくと、モチベーションアップに繋がるのではないでしょうか。
資金計画から導入を検討しよう
決算賞与の支給は節税手段としてのメリットもあるため魅力的です。しかし、支給しすぎてしまうと税金や社会保険料の支払いが追いつかなくなることも…。会社の資金計画からじっくり判断して導入を検討しましょう。
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