役員借入金は、社長を始め、役員が会社に貸し付けているお金です。役員借入金は手軽に資金調達ができるメリットがあるため、多くの中小企業で発生していますが、デメリットもあり、注意が必要です。
この記事では、役員借入金のメリットとデメリット、および会社にとって負担の少ない解消方法を紹介します。特に役員借入金が多額になっている場合には、参考にしてみてください。
役員借入金のメリット
役員借入金のメリットは、主に以下の通りです。
- いつでも借入ができ、煩雑な手続きが不要
- 無利息で資金を調達できる
- 返済期限がない
- 出資ではないため、資本金増加により税制優遇*を受けられなくなることを避けられる
*法人税法上の中小法人、租税特別措置法上の中小企業者はさまざまな税務上の優遇措置を受けられる。それぞれ資本金1億円以下、かつ所定の要件あり。
役員借入金は、会社が資金不足の際などに、役員が自己資金を貸し付けるものです。会社と役員間の契約となるため、返済期限を定めず無利息の場合が多くあります。
また、金融機関の融資のように審査などの煩雑な手続きを踏む必要がなく、必要な時に必要なだけ手軽に資金調達できることがメリットです。
役員借入金は、役員からの借入金であり「負債」項目になります。資本金は変動しないため、増資の際の煩雑な手続きは不要です。また、資本金が多額になると、金額によっては税務上の優遇措置が受けられなくなるところ、役員借入金はいくら借入をしても資本金は増加しないため、現在と同じ税制優遇が受けられます。
役員借入金のデメリット
一方でデメリットもあります。主なものは、以下の通りです。
- 金融機関の評価が下がる
- 相続税の課税対象となる
1.金融機関の評価が下がる
役員借入金は単なる資金の借入だけでなく、役員のプライベートな資金で会社の経費を支払った場合や、会社の資金で役員のプライベートな支払をした場合などにも増減します。役員借入金が多額になると、会社と個人の資金分離がしっかりとできていない、役員の立替経費を精算していない等と見なされ、金融機関の評価が下がる原因となります。
また、役員借入金は金融機関の借入とは異なるものの、会社にとっては負債です。負債が多額であれば財政状態の悪化として外部からの評価は下がります。ただし場合によっては役員借入金を「資本」と見なしてくれるケースがあるため「返済予定がほぼない」など資本と同様の性質がある場合には、その旨を主張してみましょう。
2.相続税の課税対象となる
役員借入金は、役員から見ると会社への「貸付金」です。役員が亡くなった時には、相続税の課税対象となります。
会社の経営状態によっては、役員へ返済できないケースも多くあります。この場合、実質的には財産としての価値がないにも関わらず、相続税の課税対象となり相続税の負担が生じてしまうため、注意が必要です。
役員借入金を解消する方法
資金調達方法として便利な「役員借入金」ですが、デメリットもあるため、多額にならないようにすることが望ましいでしょう。
役員借入金を減らすには「資金を返済すること」が通常の方法です。しかし、あまり業績の良くない中小企業などでは、返済する資金がないことが多くあります。なるべく会社の負担を増やさずに役員借入金を解消する方法は、主に以下の通りです。
- 債務免除を行う
- 役員報酬を減額する
- DESを活用する
1.債務免除を行う
債務免除を行うと、会社側では利益が計上されますが、繰越欠損金があれば法人税を負担する必要はありません。特に期限切れになる繰越欠損金がある場合には、債務免除を検討すると良いでしょう。
2.役員報酬を減額する
役員報酬を減額し、その分の資金を役員借入金の返済にあてることで、役員借入金を解消できます。役員報酬を減額すれば、源泉所得税や社会保険料の負担も減らせるというメリットもあります。
現在赤字であれば、役員報酬を下げて損金の金額が減少してもなお赤字であることが多く、この場合法人税の負担は増えません。
3.DESを活用する
DESはデット・エクイティ・スワップの略で、債権者が債権を現物出資し、株式を得る方法です。
役員が会社への貸付金を現物出資し、株式を得ることで、役員借入金は解消されます。負債が資本へ振り替えられる状態です。
ただし、債権である「貸付金」は時価で評価されるため、評価額が低い場合は益金が発生し、法人税の課税対象となるため注意が必要です。
また、資本金が増加するため、資本金の金額によっては中小企業の税制優遇を受けられなくなる可能性もあります。増資後に資本金がいくらになるかを把握しておきましょう。
相続税対策として暦年贈与も有効
会社の業績が悪くない場合には、上記の方法では法人税の負担が増える可能性があります。この場合、役員の相続税対策のためには、役員が「貸付金」を暦年贈与する方法を取ることも有効な対策の一つです。
ただしこの場合は会社の「役員借入金」は解消せず、受贈者からの借入金となるだけです。会社の評価を下げたくない場合は、暦年贈与は問題を先送りしているだけであり、効果はありません。
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本記事は役員借入金のメリットとデメリット、および会社にとって負担の少ない解消方法を紹介しました。
役員借入金は資金調達方法として便利ですが、前述したようにデメリットもあるため、多額にならないように気を付けることが望ましいでしょう。資金を返済できれば問題ないですが、難しい場合には会社の負担をなるべく少ない方法で役員借入金の解消ができるような方法を検討してみてください。
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