相続対策にはさまざまな方法がありますが「養子縁組」はその中の一つです。養子縁組をして法定相続人の数が増えると、相続税の基礎控除額や死亡保険金、死亡退職金の非課税控除額を増加でき、相続税の節税につながります。
一方で、養子縁組により法定相続人が増えると「相続人の間でトラブルが起きる」などのデメリットも想定されるところです。この記事では、相続対策としての養子縁組についてデメリットを中心に解説します。
養子縁組とは?代表的なパターンは?
相続において、原則として養子と実子の扱いに変わりはありません。
養子縁組には、以下の2つの種類があります。
- 普通養子縁組
- 特別養子縁組
普通養子縁組は、実親との親子関係はそのままで、養親と法律上の親子関係を結ぶ方法です。養子になった方は、実親と養親それぞれの法定相続人となります。
一方、特別養子縁組は実親との親子関係を解消し、養親と法律上の親子関係を結ぶ方法です。この場合、養子になった方は養親の法定相続人になりますが、実親の法定相続人にはなりません。要件が厳しく、相続税対策としては一般的に利用されません。
相続税対策では、被相続人(亡くなった方)の法定相続人を増やして、相続税の基礎控除額や死亡保険金、死亡退職金の非課税控除額を増加させ、相続税の負担を減らすことを目的とします。
また、基本的には財産を相続させたい方を養子にします。養子に迎える方のパターンとして多い事例は以下の通りです。
- 子の配偶者
- 再婚した方の実子(連れ子)
- 孫
相続税対策だけでなく、お世話になった親族や連れ子に財産を残したいという気持ちで養子にするケースも多くあります。
養子縁組のデメリット
相続税対策の面から見た主なデメリットは、以下の通りです。
- 相続人の間で揉める可能性がある
- 孫が養子になると相続税が2割加算される
- 相続人が減る可能性もある
それぞれ解説します。
相続人の間でもめる可能性がある
養子縁組をすると、法定相続人が増える一方で、法定相続割合は減少します。例えば法定相続人が子供1人であれば、100%相続できるところ、養子が1人増えたら2分の1になってしまいます。このため、養子との関係性によっては遺産の分割割合で揉める可能性があるでしょう。
相続税の申告期限は、通常では被相続人(亡くなった方)の死亡の日の翌日から10か月以内です。もし期限内に遺産分割協議が終わらないと、以下の相続税の優遇措置が受けられません。
- 相続財産を譲渡した場合の取得費の特例・・・相続税額が確定していないと受けられない
- 配偶者の税額軽減*¹
- 小規模宅地等の特例*¹
*¹ただし原則として申告期限から3年以内に遺産分割し、更正の請求をすれば適用できる
孫が養子になると相続税が2割加算される
相続人が以下の方以外の場合、相続税が2割加算されます。
- 配偶者
- 被相続人(亡くなった方)の一親等の血族
- 被相続人の代襲相続人となった孫(直系卑属)
養子は一親等の法定血族であり、2割加算の対象ではありません。しかし、孫が養子である場合には子を飛び越えて相続できることから相続税の課税を1回免れるため、加算の対象になります(実子が生存しておらず、孫が代襲相続人になった場合を除く)
相続人が減る可能性がある
本人に親、子、配偶者がおらず、法定相続人が兄弟3人だけのケースを考えてみましょう。この場合、養子1人を迎えると法定相続人は養子だけとなり、相続人の人数が減ってしまいます。養子を迎えた後、誰が法定相続人となるかよく検討しましょう。
養子縁組の注意点
養子縁組を検討する際には、主に以下の点に注意しましょう。
- 基礎控除額等の計算に含めることができる養子の人数には制限がある
- 不当に節税目的と判断される養子縁組は避ける
- 相続争いが起きないように、事前に話合いをする
- 養子縁組を解消することは難しい
それぞれ解説します。
基礎控除額等の計算に含めることができる用紙の人数には制限がある
相続税の基礎控除額や死亡保険金、死亡退職金の非課税控除額の計算に含めることができる養子の人数には、以下の制限があります。
- 被相続人(亡くなった方)に実子がいる場合は1人
- 被相続人(亡くなった方)に実子がいない場合は2人
無制限ではないことに、注意が必要です。
不当に節税目的と判断される養子縁組は避ける
亡くなる直前に養子縁組する、養子縁組だけして相続財産は渡さないなど、不当に節税目的と判断された場合には、税務署に否認される可能性があります。明確な基準はありませんが、極端な節税対策をする際にはよく検討しましょう。
相続争いが起きないように、事前に話し合いをする
前述したように、養子縁組は相続争いが起きる可能性が高くなります。「誰を養子にするか」など、事前に相続人の間で共有し、理解を求めておくとスムーズです。
養子縁組を解消することは難しい
一度養子縁組をすると、双方の同意がない限り解消は原則として難しくなります。もし財産を渡したくなくなったとしても、養子である限り遺留分の権利が生じます。養子にする際にはその点も熟慮して決めましょう。
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養子縁組は、相続税の基礎控除額や死亡保険金、死亡退職金の非課税控除額を増やすことができ、相続税の節税につながります。また、孫を養子にすると子供の相続を飛ばして先に財産を移転でき、孫までの相続をトータルで見たときに節税できる可能性があります。
ただし「遺産分割で揉める」などのデメリットが生じる可能性もあるところです。デメリットを把握した上で、養子縁組を含めた相続対策を早めにシミュレーションすると節税やスムーズな相続につながるでしょう。専門家とよく相談することをおすすめします。
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