不動産取引や事業承継において、時として市場価格より著しく低い価格で資産を譲渡することがあります。これを「低廉譲渡」と呼びます。一見、単純な取引に見えますが、税務上は様々な影響があり、注意が必要です。この記事では、低廉譲渡の基本概念から税金への影響、そして実務上の注意点まで、詳しく解説していきます。不動産オーナーや事業承継を考えている方々にとって、重要な情報となるでしょう。
低廉譲渡の基本と目的
低廉譲渡は、一般的な取引とは異なる特殊な性質を持っています。その基本的な概念や目的を理解することは、税務上のリスクを回避し、適切な資産移転を行うために不可欠です。ここでは、低廉譲渡の定義や特徴、それが行われる状況や目的、そして関連する法律上の規定について詳しく見ていきましょう。
低廉譲渡の定義と特徴
低廉譲渡とは、資産を市場価格(時価)よりも著しく低い価格で譲渡することです。一般的に、時価の2分の1未満での譲渡が「著しく低い」と判断されます。この取引は通常の売買とは異なり、譲渡側に経済的な損失が生じる一方で、譲受側に利益が発生するのが特徴です。低廉譲渡は、単なる値引き販売とは異なり、税務上特別な取り扱いを受けることになります。
低廉譲渡が行われる状況と目的
低廉譲渡は、主に親族間、特に親子間の資産移転で行われることが多いです。その主な目的は、相続税や贈与税の負担を軽減することにあります。例えば、親が子に不動産を市場価格より安く売却することで、実質的に資産を移転しつつ、表面上は売買取引として処理することができます。また、事業承継の場面でも、後継者に事業用資産を低廉譲渡することで、スムーズな事業移転を図ることができるでしょう。
低廉譲渡に関する法律上の規定
低廉譲渡に関しては、所得税法や法人税法、相続税法などで規定があります。所得税法では、個人が法人に対して時価の2分の1未満で資産を譲渡した場合、時価で譲渡したものとみなす「みなし譲渡所得」の規定があります。一方、相続税法では「著しく低い価額の対価で財産の譲渡を受けた場合」に贈与税が課税されるため、覚えておきましょう。
低廉譲渡のケース別の税金への影響
低廉譲渡を行う場合、取引の当事者が個人なのか法人なのかによって、適用される税金や計算方法が大きく異なります。ここでは、主要な取引パターンごとに、具体的にどのような税金が課されるのか、そしてその計算方法について詳しく解説します。
個人間の低廉譲渡と税金
個人間で低廉譲渡が行われた場合、主に所得税と贈与税が関係してきます。譲渡側(売り手)には、通常の譲渡所得として所得税が課税されます。ただし、譲渡価額が取得価額を下回る場合、その譲渡損失は認められません。一方、譲受側(買い手)には、時価と実際の取引価格との差額に対して贈与税が課税されます。例えば、時価1億円の不動産を5,000万円で譲渡した場合、買い手には5000万円分の贈与があったとみなされ、贈与税が課税されます。
個人から法人への低廉譲渡と税金
個人から法人への低廉譲渡の場合、個人側には「みなし譲渡所得」課税が適用されることがあります。これは、時価の2分の1未満で譲渡した場合に、時価で譲渡したものとみなして所得税を課税する制度です。法人側には時価と実際の取引価格との差額が受贈益として計上され、法人税が課税されます。
法人が関わる低廉譲渡と税金
法人が譲渡側となる低廉譲渡の場合、法人税の課税関係が中心となります。法人から個人への低廉譲渡では、法人側に時価での譲渡益と同時に寄附金が計上されます。個人側に課税されるのは、所得税です。法人間の低廉譲渡では、譲渡側に譲渡益と寄附金が計上され、譲受側に受贈益が計上されます。
低廉譲渡の注意点と対策
低廉譲渡は、税務上のリスクを伴う取引です。適切に行わなければ、予期せぬ税負担や税務調査のリスクが生じる可能性があります。ここでは、低廉譲渡を行う際の主要な注意点や対策について解説します。
「著しく低い価額」の判断基準
低廉譲渡において最も重要なポイントの一つが、何をもって「著しく低い価額」とするかという判断基準です。所得税法上は時価の2分の1未満とされていますが、相続税法上は明確な基準がありません。一般的には、時価の70%〜80%程度であれば問題ないとされることが多いですが、個別の状況によって判断が異なる場合があります。
低廉譲渡による税務リスクと対応策
低廉譲渡にはさまざまな税務リスクがあります。最も大きなリスクは、税務当局から「行き過ぎた節税」と判断され、追徴課税を受けることです。これらのリスクに対応するためには、まず取引価格の根拠を明確にすることが重要です。不動産鑑定評価書を取得したり、類似取引事例を収集したりするなど、客観的な資料を準備しておきましょう。
専門家への相談の重要性
低廉譲渡は複雑な税務処理を伴うため、専門家への相談が不可欠です。税理士や弁護士などの専門家に相談することで、個別の状況に応じた最適な取引設計が可能になります。例えば、単純な低廉譲渡ではなく、税制上の特例措置を活用する方法もあります。必要に応じて税理士などの専門家に相談するようにしましょう。
まとめ
低廉譲渡は、適切に行えば効果的な資産移転の手段となりますが、同時に税務上のリスクも伴います。この記事で解説したように、取引の当事者や状況によって適用される税金や計算方法が異なるため、個別の状況に応じた慎重な検討が必要です。特に「著しく低い価額」の判断や税務リスクへの対応には注意が必要です。税理士などの専門家への相談を通じて、適切に必要な資料の準備等を行うことが、安全かつ効果的な低廉譲渡の実現につながるでしょう。
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