原則課税と簡易課税のどっちが良い?メリット・デメリットを徹底比較

税務情報

消費税の計算方法には原則課税と簡易課税の2種類があります。簡易課税の要件を満たす事業者でも、簡易課税を選ばず原則課税を選ぶことが可能です。

 

とはいえ両者は全く異なる性質をもつため「どっちが良いか判断できない」「なるべく低額にしたいけれど、どっちの方が有利になるかわからない」とお悩みの人も多いでしょう。

 

そこで今回は、原則課税と簡易課税の違いを詳しく解説します。

原則課税のメリット

原則課税は売上に係る消費税額(売上税額)から仕入れに係る消費税額(仕入税額)を差し引いた額を納付額とする方法です。この章では原則課税のメリットを紹介します。

消費税の正確な金額を把握できる

原則課税では売上税額と仕入税額のどちらも実際にかかった金額を用います。したがって、実際の取引に基づく正確な消費税額の把握が可能です。

仕入税額が売上税額を上回る場合は還付を受けられる

仕入税額が売上税額を上回る場合は還付を受けられます。簡易課税ではいかなる場合も必ず納付になるため、還付の可能性があるのは原則課税ならではといえるでしょう。

 

還付が発生しやすい例として、高額の設備投資をする年度や、仕入が多い年度などが挙げられます。還付まではいかなくても、原則課税の方が節税につながる可能性が高いでしょう。

原則課税のデメリット

続いて、原則課税のデメリットを2つ紹介します。

経理処理や税務申告に手間がかかる

原則課税の最も大きなデメリットは、簡易課税に比べて経理処理や税務申告に手間がかかる点です。

 

原則課税による計算では実際にかかった消費税額を使います。すべての課税取引で適切な税区分の設定や消費税の集計が必要なため、必要な作業量が多いです。

 

また、2023年10月に開始されたインボイス制度により、仕入税額控除に含められるのはインボイスを保管している取引のみとなりました。それに従い請求書がインボイスの要件を満たしているかの確認や、インボイスとそれ以外の請求書を分ける作業など、請求書管理の手間も発生します。

 

税務申告のルールも複雑です。専門知識がない人が正確な計算および税務申告を行うのは難しいでしょう。

簡易課税に比べて税負担が重くなる恐れがある

簡易課税では売上税額に事業区分ごとに定められたみなし仕入率を乗じた額を仕入税額とします。みなし仕入率はわりと高めに設定されているため、差し引ける額が大きくなりやすいです。反対に、原則課税の方が税負担が重くなりやすいといえます。

簡易課税のメリット

簡易課税とは消費税の納付額を以下の計算式で求める方法です。

 

納付額=売上税額-売上税額 × 事業区分ごとに定められたみなし仕入率

 

この章では、簡易課税のメリットを2つ紹介します。

消費税の計算が容易

前述のように簡易課税では実際の仕入税額は使いません。売上税額にみなし仕入率を乗じた額を使うため、納付額の計算が簡単になります。また、決算確定前の段階における納税予測も容易です。

消費税に関する事務負担を軽減できる

簡易課税では以下の作業が必要ありません。

  • 仕入取引の適切な税区分の設定
  • 仕入税額の集計
  • 受け取った請求書がインボイス(適格請求書)の要件を満たしているかの確認
  • インボイスの保存
    ※取引の証憑として請求書の保管自体は必要

 

作業の量が少ないため、事務負担の大幅な軽減ができます。

簡易課税のデメリット

続いて、デメリットを2つ紹介します。

消費税の還付を受けられない

簡易課税を選択している場合、仕入税額の方が高額でも還付を受けられません。近いうちに設備投資や高額の仕入を予定しており仕入税額が高額になりそうな場合は、原則課税を選択した方が良いでしょう。

複数事業を営む場合はかえって負担が重くなるリスクが高い

簡易課税で用いるみなし仕入率は事業区分ごとに定められています。1つの会社で複数事業を営む場合は事業区分ごとにみなし仕入率の適用が必要です。

 

したがって、以下のような作業が必要になります。

  1. 売上取引を事業区分別に管理
  2. それぞれの税額を集計する
  3. それぞれに応じたみなし仕入率を乗じて仕入控除税額を計算

 

必要な作業が増えるため、かえって負担が重くなるリスクが高いです。

原則課税と簡易課税のどっちが良い?

原則課税と簡易課税はそれぞれ異なる性質をもつため、どちらが良いと一概にはいえません。自社の事情を考慮して適した方法を選ぶ必要があるでしょう。

 

この章では参考として、原則課税がおすすめなケースと簡易課税がおすすめなケース、それぞれの例を紹介します。

原則課税がおすすめなケースの例

原則課税がおすすめできる例として以下の3つが挙げられます。

  • 近いうちに高額の設備投資や仕入を予定している
  • 実際の仕入率の方が高い
  • 複数事業を営んでいるため簡易課税でも手間がかかる

 

みなし仕入率を使うか否か、どちらの方が節税になるか比較するのが良いでしょう。

簡易課税がおすすめなケースの例

次に、簡易課税がおすすめな例を紹介します。

  • 仕入や経費が少ない
  • 税務申告の手間を少なくしたい
  • 経理体制が整っていないため手間がかからない方法を選びたい
  • インボイスによって受ける影響を最小限にしたい

 

節税面だけでなく、負担を軽減したいという理由で選ぶのも良いでしょう。

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