消費税は法人にかかる税金の中でも納付額が高額になりやすいものの1つです。原則として現金で一括納付のため、高額の場合は資金繰りの悪化をまねく恐れがあります。
消費税は性質上、節税が難しいと考える人も多いでしょう。しかし消費税の節税は不可能とは限りません。ポイントを押さえる必要はありますが、節税テクニックを上手く活用できれば税負担を軽減できる可能性があります。
今回は消費税の節税対策について詳しく解説します。
節税の前に|消費税の計算方法
前提として消費税の計算方法には2種類の制度が存在し、納付額の計算方法が全く異なります。消費税を最小限に抑えるには、自社にとって有利な方を選ぶことが大切です。
この章では、消費税の計算方法について解説します。
原則課税方式
原則課税方式による納付税額の計算方法は以下の通りです。
納付額=課税売上に係る消費税額(売上税額)-仕入に係る消費税額(仕入税額)
売上税額と仕入税額のどちらも、実際にかかった税額を用います。
後述する簡易課税方式を適用するための手続きをしない限り、自動的に原則課税方式が適用されます。
簡易課税方式
簡易課税方式は、売上税額に事業区分ごとに定められたみなし仕入率を乗じた額を仕入税額とみなし、納付額を計算する方法です。を式に表すと以下のようになります。
納付額=売上税額-売上税額 × みなし仕入率
簡易課税方式の場合、実際の仕入に係る消費税額は使いません。売上税額とみなし仕入率のみで納付額を計算できます。
なお、簡易課税方式による計算をできるのは以下の要件をすべて満たす事業者のみです。
- 基準期間の課税売上高が5,000万円以下である
- 消費税簡易課税制度選択届出書を提出している
消費税の節税テクニック5選
続いて、消費税の節税効果が期待できる具体的な方法を5つ紹介します。
納付税額を抑えられる課税方式を選択する
最も大切なのは、自社にとって有利な方を選択することです。
以下の条件を例に、原則課税方式と簡易課税方式それぞれを選んだ場合の納付税額の差を考えます。
- 売上税額:500万円
- 仕入税額:200万円
- 事業区分:サービス業(第5種事業)、みなし仕入率50%
原則課税方式の場合、納付税額は以下のようになります。
500万円-200万円=300万円
一方、簡易課税方式による納付税額は以下の通りです。
500万円-(500万円 × 50%)=250万円
今回のケースでは、簡易課税方式の方が納付税額を抑えられました。したがって、簡易課税方式を選ぶ方が有利となります。
もちろん、すべてのケースで簡易課税方式が有利になるとは限りません。たとえば実際の仕入率の方が高い場合や、設備投資など高額の支出が発生する予定がある場合は、原則課税方式の方が有利です。
消費税の節税対策は、2つの課税方式のうち有利な方を選択するのが大前提となります。自社の場合はどちらの方が有利かシミュレーションした上で判断しましょう。
なお、以降で紹介する節税テクニックはいずれも原則課税方式の場合に実施できる手法です。簡易課税方式では実際の仕入税額を使わないため、仕入税額を増やす方法による節税対策ができない点にご注意ください。
人材派遣や外注などアウトソーシングを活用する
自社で人材を雇うのではなく、人材派遣や外注などのアウトソーシングを活用することで消費税の節税が可能です。
自社で人材を雇う場合に発生する給与や賞与、社会保険料などの経費には消費税がかかりません。一方でアウトソーシングにかかる費用は消費税の課税対象です。人材派遣では派遣社員が自社内で勤務しますが、派遣会社に支払う費用は消費税の対象になります。
消費税を抑えるためには、なるべく仕入税額を増やすのが理想です。そのため節税という観点で考えると、自社で雇うよりもアウトソーシングを活用した方が効果的といえます。
出張手当を支払う
出張手当とは出張に際して発生する細かな支出や、心身の負担等を補償する目的で支給する手当です。「出張日当」「旅費日当」とも呼ばれます。
出張手当は消費税の課税対象です。出張の機会が多い会社であれば、出張手当の支給により計上できる消費税が大幅に増えるでしょう。計上できる経費の額が増えるため、法人税の節税にもつながります。
なお、出張手当を支払うには出張旅費規程の整備が必要です。また、海外出張に関する出張手当は消費税の対象になりません。
収入印紙を金券ショップで買う
収入印紙は購入場所によって消費税の扱いが異なります。
収入印紙の税区分が非課税となるのは、収入印紙を印紙の売渡し場所で購入した場合です。郵便局のほか、郵便窓口業務・印紙の売りさばきに関する業務を受託している事業者から購入した場合は非課税となります。
その他の場所で購入した収入印紙は消費税の課税対象です。したがって、収入印紙を金券ショップで購入すれば計上できる仕入税額が増え、節税につながります。
大規模な設備投資を行う
大規模な設備投資を行えば高額の消費税の支払いが発生します。仕入税額が高額になるため、納付税額を大きく減らせる可能性が高いです。
また、受け取った消費税である売上税額より支払った消費税である仕入税額の方が多ければ消費税の還付を受けられます。設備投資を行った年は仕入税額が高額になりやすく、消費税の還付対象になるケースも多くみられます。
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