個人事業主に課せられる所得税には多くの節税手法が存在し、少しの工夫や対策によって税額が大きく変わる場面もみられます。個人事業主の税負担を最小限にするためには所得税の節税対策が必須です。
今回は個人事業主におすすめの節税手法を7つ紹介します。各テクニックの特徴や注意点を詳し解説しているので、ぜひ最後までご覧ください。
個人事業主の節税テクニック7選
個人事業主におすすめの節税テクニックを7つ紹介します。
青色申告にする
個人事業主が節税のために必ず行うべきなのが青色申告にすることです。
青色申告が節税につながる理由として以下の5つが挙げられます。
- 最大65万円の青色申告特別控除の適用を受けられる
- 赤字を最長3年間繰り越すことができ、翌年以降の黒字と相殺できる
- 家族や親族への給与を経費として計上できる(青色事業専従者給与)
- 貸倒引当金を計上できる
- 取得価額30万円未満の減価償却資産について、購入した年に全額を減価償却できる(経費計上できる)
青色申告特別控除をはじめ、節税につながるさまざまな特典を利用できます。
なお、青色申告を行うためには青色申告をしようとする年の3月15日までに「青色申告承認申請書」の提出が必要です。なお、その年の1月16日以降に事業を始めた場合は、その事業年度開始の日から2ヵ月以内が期日となります。
必要経費を漏れなく計上する
税負担を最小限に抑えるためには、必要経費を漏れなく計上することも大切です。
事業所得は「事業収入-必要経費」で計算します。必要経費の額が増えるほど事業収入から差し引ける額が大きくなり、事業所得が少なくなるため節税につながります。
経費計上できる支出の中でも、特に見落としやすい支出の例は以下の通りです。
勘定科目 | 該当する支出の例 |
旅費交通費 | 事業のために行なった外出や宿泊にかかる費用全般
電車代、バス代、タクシー代、宿泊代など |
通信費 | インターネット代、電話代、切手代 |
接待交際費 | 取引先への差し入れ代、取引先との飲食代 |
会議費 | 打ち合わせ時に発生した支出、カフェで仕事をするときの飲み物代 |
租税公課 | 事業税、固定資産税、印紙税 |
支出を定期的に見直し、必要経費として計上できるものの漏れがないか確認しましょう。
なお、領収書やレシートなどの証憑書類を保管していなければ経費計上を否認されてしまう恐れがあります。証憑書類をなくさないよう適切な方法での管理が必須です。
控除制度を漏れなく活用する
所得税には所得控除と税額控除という制度が存在します。
所得控除とは収入から必要経費を控除した所得から差し引くものです。所得控除を差し引いた金額が課税所得となり、課税所得に税率を乗じて所得税を計算します。
税額控除は課税所得に税率を乗じて計算した額から直接差し引く控除です。税額控除を差し引いた後の金額が最終的な所得税額になります。
所得控除と税額控除いずれも多くの制度が存在しますが、要件を満たしても自動で適用されるわけではありません。控除を受けるためには確定申告で手続きを行う必要があります。
各控除制度の要件を確認し、自身が要件を満たす制度があれば漏れなく活用しましょう。
共済に加入する
共済への掛金は所得控除の1種である「小規模企業共済等掛金控除」の対象となります。すなわち共済に加入し掛金を支払うことで課税所得が少なくなるため節税が可能です。
個人事業主向けの主な共済として以下の2種類が挙げられます。
- 小規模企業共済
- 経営セーフティ共済(中小企業倒産防止共済)
共済は節税だけでなく将来への備えとしても有用な制度です。掛金は一定の範囲内で自由に設定できます。
iDeCoを活用する
iDeCoの掛金は全額所得控除の対象になります。また、iDeCoの運用益は非課税のため、投資運用における税負担もありません。さらに、iDeCoを一時金として受け取る場合は退職所得控除、年金として受け取る場合は公的年金等控除の対象です。
掛金の支出時、運用益の発生時、受取時のすべてで節税効果を得られます。
ふるさと納税を行う
ふるさと納税は寄付金から2,000円を引いた額が所得税や住民税の控除対象になります。支払う税額が減るわけではなく、税金の前払いというイメージです。そのため厳密には節税とは異なります。
ただし、ふるさと納税には以下のようなメリットがあります。
- 2,000円の自己負担で返礼品がもらえる
- 応援したい自治体を選んで寄付できる
ふるさと納税には返礼品があるため、単に税金を納めるだけより得られるものが大きいです。応援したい自治体を選べる点も、通常の納税にはないメリットといえるでしょう。
法人成りをする
所得が高額の場合は法人成りをして会社として事業活動をする方が節税になる可能性があります。
法人成りが節税につながる理由として、主に以下の5つが挙げられます。
- 所得税の税率は5~45%、法人税の税率は15~23.2%で、所得が高額の場合は法人税の方が税額を抑えられる可能性が高い
- 会社から経営者である自身に対して支払う役員報酬は会社の経費として計上できる
- 役員報酬が給与所得控除の適用対象になる
- 出張日当を計上できる
- 役員への退職金を経費計上できる
ただし、すべてのケースで法人成りが節税につながるとは限りません。所得額によっては、法人税より所得税の方が安価に済むこともあります。
また、会社設立には法定費用として最安値でも20万円近い費用がかかります。単純な節税効果だけでなく、会社設立や運営にかかるコストも考慮した上での判断が必要です。
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