デジタル遺言制度の導入が検討中。デジタル遺言で何が変わる?

相続

2023年5月にデジタル遺言制度が2024年の導入に向けて現在調整中というニュースがありました。公共料金や税金もコード決済できるようになったりと、デジタル化が進んでいくなかで遺言がデジタル化できるようになれば更に利用する人も増えてくるでしょう。

この新制度では遺言の種類の中でも本人が直接紙に記す自筆証書遺言が対象で、スマホやパソコンで作った遺言がクラウド上に保管される仕組みです。今回は現行制度の遺言の中でもっともオーソドックスな自筆証書遺言について解説します。また、デジタル遺言に移行するメリットもお伝えします。

代表的な遺言の種類

代表的な遺言としては自筆証書遺言、公正証書遺言、秘密証書遺言があります。自筆証書遺言は、よくドラマでも出てくるような遺言で、被相続人が自分自身で書く遺言です。(ドラマでは相続時にこの遺言に誤解が生じてトラブルが発生するシーンがありますよね)

また、公正証書遺言は、公証人と2人以上の証人の立ち会いのもとで被相続人が遺言を話して公証人が書き留めたものです。被相続人ではなく公証人や証人の立ち会いのもとで作成されるので、自筆証書遺言のようなミスリーディングも防げます。

そして、秘密証書遺言は、被相続人が自分で遺言を書いた後に封書して秘密に保管する遺言です。公証人や証人の確認が必要となりますが、誤解が生じやすいうえに手続きがややこしいことから現在ではあまり利用されていません。

 

自筆証書遺言のメリット・デメリット

自筆証書遺言は、被相続人自身が直接書き残す遺言です。そのため簡単にできるものかと思いきや日付が間違っていたり、署名の押印を忘れていると効力を持ちません。また、遺言を法務局に預けたのち、被相続人の死亡後に受け取る制度では用紙に厳しい規定があります。さらに、被相続人の遺言に不備や誤解が生じて相続時にトラブルが発生するケースもあります。

デジタル遺言でできること

デジタル遺言制度では従来の自筆証書遺言で必要だった署名の押印がデジタル署名となります。スマホやパソコンで作成されるので、読めない文字となる心配はありません。そしてクラウド上にて保管され、ブロックチェーン技術によって改ざんが防止されるので安心して遺言を託せます。

また、自筆証書遺言では財産目録などの書類が別途必要だったり、ある程度書式が決まっていました。しかし、デジタル遺言制度では、恐らくe-taxでの確定申告のように特定のフォーマットに沿って文字や数字などを入力すれば完成すると思われます。そのため、形式の誤りによる失効といったケースは少なくなるでしょう。また、現行の自筆証書遺言では、作成において司法書士や弁護士などのプロに依頼する必要がありました。デジタル化に伴いある程度フォーマットが決まっていればプロのサポートなしでもある程度作成できるようになります。このようにデジタル遺言では、遺言作成の複雑なシステムの簡略化が期待できそうです。

相続の多様化にデジタル遺言が向いている?

遺言制度が始まった時代に比べると現代では家族が多様化しています。これまでは親戚同士で顔を合わせる機会が多かったものの、最近では親戚であっても顔や名前すら分からないことも多いです。また、結婚や出産をする人口が減り、法律婚でなく事実婚のケースも増えました。熟年離婚やおひとりさまも増えています。必ずしも自分の家族が一番大切な存在となる訳ではなくなり、同棲するパートナーや友人、推しが大切な存在となっているケースもあるのです。現代の人間関係のあり方は現行の遺言・相続制度にフィットしづらいのが現状といえます。

日本と同じく家族のあり方が多様化している先進諸国でも遺言がデジタル化しつつあります。多くの人種が住むアメリカでは2019年に遺言の電子化が制定されています。儒教の影響が強くいまだに家族を重んじる傾向にある韓国でも遺言制度が改定されています。その一方で、ドイツやフランスといった国ではデジタル化が進んでいません。日本だけでなく世界各国で多様化が進むなかで遺言のデジタル化が課題となるでしょう。

また、今後日本の人口が減っていくなかで日本で働く外国人が増えるかもしれません。そのようななかで外国籍のパートナーに相続したいというケースも考えられます。現時点ではまだ実現できなくても、デジタル遺言によって異国籍間での相続が容易になる日が来るのもそう遠くはないでしょう。

デジタル遺言でストレスフルな遺言作成ができる

従来の遺言制度では書式が決まっていたり、煩雑な手続きが必要だったり、相続時に誤解を招いてトラブルが起きやすかったり…とデメリットがありました。これでは、高齢化が進んで被相続人・相続人ともに高齢での相続となるなかで遺言だけでもエネルギーを使ってしまいますよね…。(ただでさえ相続は労力がいります)

そのようななかでデジタル遺言の登場によって従来よりも遺言作成が簡単になると予想されます。また、それに付随して民間でもデジタル遺言作成サービスが多くリリースされるようになるでしょう。これまでは弁護士や司法書士を雇わねばならなかったところが、それよりも手頃な価格で遺言を作れるようになるのでしょう。デジタル遺言にとどまらず、ますます高齢化が進んでいくなかで今後も相続周りの手続きがデジタル化されていくのでしょう。

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