国外転出時課税制度では、海外に移住する場合に1億円以上の資産の含み益に対して課税されることがあるため、資産家にとって気にしておきたい制度です。
この制度は資産の国外逃避を防ぐために導入されたもので、適切に対策しておかないと予期せぬ税金が発生するリスクがあります。1億円以上の資産を保有する資産家の方々は、この制度について十分に理解し、適切な準備を行うことが必要です。
そして、相続や贈与で海外に住む相続人に資産が移るときにもこの制度の対象になる可能性があります。今回は国外転出時課税制度についてわかりやすく解説します。
国外転出時課税制度とは
国外転出時課税制度は、特定の条件下で日本から国外に移住する際に、その時点で保有する資産に対して課税する制度です。
この制度は平成27年度税制改正により導入され、平成27年7月1日から施行されています。
具体的には、有価証券(株式、投資信託等)、匿名組合契約の出資の持分、未決済の信用取引、未決済のデリバティブ取引が対象になります。
この制度の目的は、日本から海外へ資産を移転することによる脱税の防止です。
国外転出時課税制度の対象者は、以下の条件を満たす人です。
- 国外転出する時点で、所有する資産の価額の合計が1億円以上であること。
- 国外転出する日前10年以内に、日本国内に5年以上住所または居所を有していたこと。
対象者が国外に転出する時に、対象資産の含み益に対して所得税が課税されます。
詳しく説明すると、対象資産が譲渡されたものとみなされ、その時点での評価額に基づいて課税が行われます。
すぐに納税できない場合や納税額の高さに困っている場合、納税猶予制度や減額措置が適用される場合があります。
相続・贈与時に資産が国外転出する場合
国外転出時課税制度は、相続や贈与により資産が国外に移転する場合にも適用され、贈与者や被相続人が一定の条件を満たす場合に、贈与や相続時点で課税されます。
相続の場合
相続において国外転出時課税制度が適用されるのは、被相続人が1億円以上の対象資産を保有し、相続人が国外に居住している場合です。この場合、被相続人が相続開始時点でその資産を譲渡したものとみなされ、含み益に対して所得税が課税されます。
被相続人が亡くなった日から10年以内に、国内に住所を持たない期間が5年以上ある場合は、国外転出時課税の対象者となる可能性が高いです。
相続人は、準確定申告(被相続人の確定申告)をする必要があります。
贈与の場合
贈与に関しては、贈与者が国外に居住する親族などに対して、1億円以上の資産を贈与する場合に国外転出時課税制度が適用されます。相続と同様、贈与時点でその資産を譲渡したものとみなされ、含み益に対して所得税が課税されます。
贈与者は、贈与を行った年に確定申告をする必要があります。
手続きと申告の方法
国外転出時課税制度が適用される場合、贈与者や相続人は、所得税の確定申告を行う必要があります。
確定申告の際には、資産の評価額や含み益の計算方法は正しくなければいけません。また、申告に必要な書類の準備もしなくてはならず、通常の確定申告より負担が大きくなります。
税理士に確定申告を含め依頼すると安心
国外転出時課税制度は複雑なため、専門知識が必要です。自力でやろうとすると、誤った申告やミスが発生するかもしれません。誤った申告や手続きで遅延すると、ペナルティが課されるリスクもあります。
税理士に確定申告を依頼すれば、リスクの心配はありません。税務署の対応も代行してくれるため、相続人の負担が軽減します。また、専門家に任せているという安心感も得られます。
納税猶予制度と減額措置
納税猶予制度とは
納税猶予制度は、国外転出時課税制度の適用を受ける者が、一定の手続きを行うことで、納税を一定期間猶予する制度です。
納税猶予期間は通常5年間で、状況に応じてさらに5年間延長することが可能です。
納税猶予を受けるためには、国外転出時までに納税管理人の届出を所轄税務署に提出します。さらに、確定申告書では納税猶予分の所得税及び利子税の額に相当する担保を提供することが求められます。
納税猶予を受けることで、相続税申告や相続財産の売却のタイミングに発生する多額の支出による負担を軽減することができます。
減額措置とは
減額措置を受けるためには、対象資産の譲渡価額が国外転出時よりも下落している場合や、納税猶予期間中に帰国した場合といった条件を満たす必要があります。特に、資産の評価額が国外転出時よりも大幅に下落した場合は、税額の再計算を行うことで、納税額の減額が可能です。
減額措置適用の条件
- 譲渡等の際の資産の価額が国外転出時よりも下落している場合
- 納税猶予期間中に帰国した場合
- 国外転出先の国で二重課税が生じた場合
減額措置を受けるためには、所定の手続きを行い、必要な書類を税務署に提出する必要があります。
まとめ
国外転出時課税制度は、大きな金額が課税される可能性があるため、海外に住む相続人や贈与を受ける方々は注意すべき制度です。
資産の国外移転を計画している場合や、相続や贈与が予定されている場合は、早めに税理士に相談し、どのような方法で相続・贈与をするかを提案してもらうとよいでしょう。専門家のサポートを受けることで、下記の手続きすべての負担が軽減されるのは精神的メリットがとても大きいです。
- 相続税の申告
- 贈与税の申告
- 準確定申告(相続)
- 確定申告(贈与)
- 納税猶予の手続き
- 減額措置の手続き
佐久間会計事務所では資産家のお客様も多いことから、国外転出時課税制度をはじめとする資産家のための税制に強みをもっております。また、不動産売却の案内や2次相続対策も含めた⽣前対策など、幅広いご相談に対応しております。
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