創業融資の審査で重視される要素の1つに自己資金があります。資本金と似ていますが、資本金の全額が自己資金と認められるわけではありません。資本金の中でも、返済義務がないと認められたお金のみが自己資金として評価されます。
創業融資の利用を検討しているのであれば、資本金と自己資金の区別をつけた上で、十分な自己資金の用意が必要です。
今回は資本金と自己資金の違いについて詳しく解説します。
資本金と自己資金の違いとは
はじめに、資本金と自己資金の違いについて解説します。
資本金とは
資本金は会社経営や事業の元手になるお金です。お金の出所に関係なく、出資者が資本金として払い込んだお金は資本金として計上されます。
自己資金とは
自己資金は返済義務がなく持ち主が自由に使えるお金です。以下2つの要件を満たすお金が自己資金となります。
- 返済義務がない
- お金の出所を確認できる
創業や会社設立においては、事業のために用意した資金のうち、返済義務がないお金を自己資金と呼びます。
創業融資の審査では自己資金がチェックされる
創業融資の審査でチェックされるのは資本金ではなく自己資金です。
資本金は原則として返済義務がないお金ではあるものの、発起人等が個人で借入をしたお金が含まれている可能性を否定できません。そのため資本金や自己資金として申告した金額をそのまま審査に用いることはせず、細かなチェックの上で自己資金の額が算定されます。
この章では自己資金として認められるお金の例と、自己資金と認められないお金について解説します。
自己資金として認められるお金の例
自己資金として認められるのは、返済義務がなく出所が明確なお金です。具体的には以下の例が挙げられます。
- 給与や賞与
- 退職金
- 事業による売上収入
- 贈与によって受け取ったお金
- 外部から受けた出資金
(返済義務がなければ外部から調達したお金も自己資金とみなされます) - 有価証券や不動産などの資産の売却によって得たお金
- みなし自己資金
(事業のためにすでに使ったお金)
本人名義の預金通帳に貯めたお金であり、かつ、上記いずれかの要件を満たすお金であれば自己資金として認められる可能性が高いです。
通帳のほかにも、返済義務がないお金である旨を証明できる資料を用意できるとより良いでしょう。たとえば贈与であれば贈与契約書、資産売却であれば売買契約書もあわせて提出するのが理想です。
自己資金と認められないお金とは
資本金として計上したお金でも、返済義務があるお金や出所を証明できないお金は自己資金として認められません。自己資金と認められないお金の例を紹介します。
- 友人・知人・金融機関等から借り入れた返済義務のあるお金
- 売却していない有価証券
(現金同等物に該当するものの、売買前の段階では自己資金と認められません) - タンス預金
タンス預金が自己資金と認められないのは、お金の出所や流れを証明できないためです。たとえ自身で貯めた返済義務のないお金であっても、客観的に証明する手段がなければ融資審査では自己資金とみなされないため注意しましょう。
自己資金が足りない場合の対処法
自己資金という概念が重要になるのは創業融資の申し込み時です。自己資金が足りなければ創業融資を利用できず、思うような資金調達ができない恐れがあります。
この章では自己資金が足りない場合の対処法を3つ紹介します。
融資以外による資金調達を検討する
自己資金が足りず創業融資を利用できない場合、融資以外の方法による資金調達を検討しましょう。
創業時に実施できる資金調達方法として以下の例が挙げられます。
- 創業者向けの補助金や助成金の活用
- クラウドファンディング
- エンジェル投資家やベンチャーキャピタルからの出資
- 友人や知人等からの借入
自己資金要件がない、もしくは要件が厳しくない融資に申し込むのも1つの手段です。
例えば地方自治体・金融機関・信用保証協会が連携して行う制度融資は、一般的な金融機関の融資に比べて利用しやすい傾向にあります。
創業計画を縮小する
融資を利用できず必要な資金を調達できない場合、より少ない資金で事業を開始できるよう創業計画を縮小するという方法もあります。足りない資金を調達するのではなく、今ある資金に合わせて計画を変えるイメージです。
創業計画の縮小として以下の例が挙げられます。
- オフィスや店舗を構える場所を地価の安いエリアに変更する
- 導入する設備をより安価なものに変える
- 取引先を見直してコストを削減する
とはいえ、設備投資や運転資金を削り過ぎては質の高い事業展開ができません。削れる部分と妥協できない部分の明確化が必要です。
自己資金が貯まるまで創業を遅らせる
自己資金が貯まるまで創業を遅らせるという選択肢もあります。
創業に向けて早いうちから準備することや、限られた資金で上手く事業を展開するのも大切ではあります。しかし資金が不足している状態ではどうしても出来ないことが多く、事業を軌道に乗せるのが難しいのが事実です。
無理に早期の創業をしようとせず、資金が貯まり余裕が出来るまで創業を遅らせるのも戦略の1つといえます。
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