所得税法では10種類の所得が定められています。働いている方にとってはお馴染みだと思いますが、給与所得や事業所得はその代表例でしょう。そのほかには不動産を持っている方の不動産所得など、所得の種類によって分類されています。
しかし、決まった種類に分類できない所得として「一時所得」や「雑所得」といったものが挙げられます。例えば宝くじが当たって賞金を獲得した場合はこれらの所得に分類されます。では一時所得と雑所得について、具体的な違いは何なのでしょうか?
一時所得にはどのような所得が含まれる?
一時所得とは他8種類の所得に含まれない所得のうち、要件を満たした所得をいいます。「他8種類の所得」とは、給与所得、事業所得、利子所得、配当所得、不動産所得、譲渡所得、山林所得、退職所得のことです。ざっくりと8種類について解説します。
- 給与所得…会社からの給料が対象
- 事業所得…継続的な事業での収入が対象
- 利子所得…預貯金の利子や、国債など公社債の利子などが対象
- 配当所得…株式の配当金などが対象
- 不動産所得…土地や建物、不動産上の権利などが対象
- 譲渡所得…不動産や株式、ゴルフ会員権などの資産の譲渡による所得
- 山林所得…山林の伐採または譲渡による所得
- 退職所得…退職金や企業年金の退職一時金などが対象
「それ以外」として含まれている一時所得については、所得税法にて下記のように定義されています。
- 継続的な事業から生じていない
- 商品やサービスの対価として生じていない
それでは、どのようなものが一時所得になるのでしょうか?一時所得には下記のようなものがあります。
- 保険の満期保険金や解約返戻金
- 競馬や競輪の払戻金
- 懸賞金や賞金 など
つまり、「宝くじが当たった!」「競馬で勝った!」といった場合は一時所得となるのです。要するに臨時収入を得たときには一時所得として見なされると考えて良いでしょう。
雑所得にはどのような所得が含まれる?
では、どのような所得が雑所得として見なされるのでしょうか?雑所得とは、他の9種類の所得に該当しない所得のことをいいます。具体的には下記のケースです。
- 副業で稼いだお金
- 公的年金(国民年金、厚生年金、企業年金など)
- 講演料や原稿料
- FXや暗号資産で稼いだお金
- 専業主婦のお小遣い稼ぎ など
暗号資産での利益に関しては雑所得に含まれることが国税庁からも発表されたばかりです。まれに「暗号資産でガッポリ稼いだ方が納税を忘れてしまい、何億も追徴されてしまった」というニュースがありますが、暗号資産やFXといった資産運用も課税されてしまうので注意しましょう。
一時所得と雑所得の共通点
一時所得と雑所得に該当する所得には、それぞれ特徴があります。一時所得は臨時収入のようなもの、雑所得は副業で稼いだものとざっくりと考えても良いでしょう。とはいえ、どのように課税されるのかなど両者の共通点について紹介します。
共通点1:総合課税となる
一時所得と雑所得は、どちらも総合課税です。総合課税とは対象となる所得を合算した総所得に対して課税する方法です。とはいえ、雑所得に含まれる先物取引やFXは分離課税となるので注意しましょう。
また、両者も内容によっては非課税となるケースもあり、例えば遺族年金や一定の生命保険金・損害保険金が含まれます。なお、意外にも宝くじの賞金は非課税になります。
共通点2:損益通算ができない
損益通算とは、複数の所得の種類のなかで、黒字の所得と赤字の所得があった際に赤字分を黒字分から差し引くことです。一時所得や雑所得では損益通算ができないものの「内部通算」はできます。
内部通算というのは、例えば雑所得の内訳が副業Aと副業Bとすると、副業Aでの赤字を副業Bで通算できるということです。
一時所得と雑所得の違い
一時所得と雑所得は、両者とも総合課税であり、損益通算ができません。「ほとんど似ているのでは?」と思われる方もいらっしゃるでしょう。ですが、両者では必要経費の捉え方などが若干異なります。
違い1:必要経費の捉え方
経費の定義において、一時所得のそれよりも雑所得のほうが広義となっています。一時所得においての経費とは「収入を得るためにかかった費用」のことで、例えば競馬であれば馬券の費用が経費と見なされます。
一方で雑所得においての経費では、副業でネットショップを営んでいる場合、サーバー代や広告費が経費として見なされます。
違い2:確定申告上での控除や所得金額
一時所得と雑所得において決定的に異なるのは、確定申告時にどのように計上されるかといった点です。雑所得は特別控除額がなく、所得分がそのまま課税対象となります。
しかし、一時所得の場合は「収入ー収入を得るためにかかった費用」からさらに最大50万円を特別控除として差し引けるうえ、2分の1の金額が課税対象となります。つまり、一時所得として懸賞で50万円当たったとしても特別控除で50万円が差し引かれるため、その分の確定申告は不要ということになります。
お小遣い稼ぎであっても確定申告を忘れずに
主婦のお小遣い稼ぎや副業も雑所得として含まれますが、当然扶養控除の枠を超えると扶養が適用されなくなります。20万円以下の収入は原則として確定申告が不要であるものの、もし20万円を超えていたとしても経費を差し引いて20万円以下にすることも可能です。
近年ではバレないだろうと思っていた副業がバレてしまい追徴されるケースがあります。どのようなお小遣い稼ぎや副業であっても確定申告は忘れないようにしましょう。
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