不動産信託は、所有する不動産を他の人に預け、管理・運用を任せる仕組みです。不動産信託にはメリットだけではなく、デメリットも理解しなければなりません。本記事では、不動産信託の仕組みやメリット・デメリットを解説します。
不動産信託、相続にお困りの方は一度、税理士事務所にご相談することをお勧め致します。
不動産信託の仕組み
不動産信託とは、所有する不動産を家族や信託銀行に預け、管理や運用を任せる仕組みです。得られた利益は、あなたや指定した受益者に分配されます。自ら管理する負担を減らし、安定収入を得られるのが魅力です。
委託者・受託者・受益者の違い
不動産信託は、委託者が所有する不動産を受託者に預け、受益者のために管理・運用することを指します。それぞれの役割は以下のとおりです。
委託者 |
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受託者 |
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受益者 |
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不動産信託受益権について
不動産信託受益権とは、不動産信託における受益者の権利を指します。具体的には、以下の権利が含まれます。
- 信託財産から得られる収益を受け取る権利
- 信託財産の閲覧・謄写権
- 受益権の譲渡・売却権
不動産信託のメリット
不動産信託のメリットには以下のようなものが挙げられます。
- 通常の不動産取引より低コストで始められる
- 認知症になったときにも管理運用や処分ができる
- 二次相続に活用できる
それぞれ説明します。
通常の不動産取引より低コストで始められる
不動産信託は、通常の不動産取引と比べて、初期費用や維持費が抑えられる点が大きな魅力です。不動産購入時にかかる不動産取得税や登録免許税は必要ありません。また、維持費についても、固定資産税や都市計画税は、信託財産である不動産の所有者である受託者が負担します。
認知症になった時にも管理運用や処分ができる
不動産信託は、認知症になったときにも、住まいの管理運用や処分をスムーズに行える有効な手段です。具体的には、以下のようなメリットがあります。
- 住み慣れた家で暮らし続けられる
- 本人の意思に沿った財産管理が可能
- 成年後見制度の利用を回避できる
不動産信託は、認知症対策として有効な手段の一つです。
二次相続に活用できる
不動産信託は、二次相続で起こりがちな問題を事前に解決し、大切な財産を希望する相続人に確実に受け継がせるための有効な手段です。具体的には、以下のような点が挙げられます。
特定の相続人に財産を確実に引き継ぐ | 孫のように特定の相続人に財産を確実に引き継ぎたい場合、受益者を指定することで、遺言書よりも確実な方法で希望を実現できます。 |
争いを防ぐ | 二次相続で起こりがちな遺産分割協議の争いを事前に防ぎ、家族間の円満な関係を維持できます。 |
相続税対策 | 二次相続での相続税負担を軽減できる可能性があります。 |
不動産信託は、二次相続対策としても有効な手段です。
不動産信託のデメリット
不動産信託には以下のようなデメリットもあります。
- 信託不動産の損失は損益通算できない
- 贈与税がかかる場合がある
それぞれ説明します。
信託不動産の損失は損益通算できない
信託不動産から赤字が発生した場合、他の所得と損益通算できない点は、大きなデメリットの一つです。信託によって不動産の所有者が受託者となるため、信託財産と受益者の所得が区別されるためです。対策としては、以下の方法が考えられます。
- 信託する前に修繕などの支出を行い、赤字を発生させない
- 信託する不動産を選定する際に、将来の収益性を十分に検討する
贈与税がかかる場合がある
不動産信託を設定すると、信託財産の所有権は受託者に移ります。しかし、受益者が将来その財産を受け取る権利(受益権)を得ることになるため、贈与とみなされるケースがあります。具体的には、贈与税が課税されるのは以下のケースです。
- 委託者と受益者が異なる「他益信託」の場合
- 受益者が将来、信託財産の全部または一部を取得することが確実な場合
- 受益者が信託の管理に関与できる場合
贈与税がかかるかどうかは、信託の内容や受益者の状況によって判断されます。事前に税理士に相談し、贈与税の課税リスクを把握しておくことが重要です。
不動産信託で失敗しないための注意点
不動産信託で失敗しないためには以下の点に注意しましょう。
- 専門家に代行する場合は費用が発生する
- 遺留分への配慮
- 内容は書面に残しておく
それぞれ説明します。
専門家に代行する場合は費用が発生する
不動産信託は、複雑な手続きを伴うため、専門家に代行を依頼する場合もあります。専門家に代行を依頼する場合、以下の費用が発生します。
- 契約書作成費用
- 登記費用
- 報酬
費用は信託内容や専門家によって異なりますが、数十万円から数百万円程度かかるケースが多いです。
遺留分への配慮
不動産信託は、相続対策として有効な手段ですが、遺留分を侵害してしまう可能性があります。遺留分とは、相続人が最低限もらえる法定相続分の2分の1の割合です。不動産信託で遺留分を侵害しないためには、以下の点に注意する必要があります。
- 遺留分を考慮した信託内容にする
- 受益者に遺留分侵害の可能性について説明する
- 必要に応じて、遺留分放棄協議書を作成する
事前に専門家に相談し、遺留分を侵害しない信託内容にすることが重要です。
内容は書面に残しておく
不動産信託は、トラブルを防ぐためにも、信託内容を書面にしておきましょう。書面には、以下の内容を記載する必要があります。
- 委託者・受託者・受益者の氏名
- 信託する財産の具体的な内容
- 信託期間
- 利益分配方法
- 信託終了後の財産の帰属
書面は、公正証書にしておくことをおすすめします。公正証書は、公証人が作成した文書であり、法的な効力が高くトラブルになった際に証拠として役立ちます。
まとめ
不動産信託は、所有権を維持したまま、第三者に管理・運用を任せられる便利な制度です。老後の不安や相続対策にも役立ち、受託者はプロだけではなく家族も選択できます。メリットだけではなくデメリットも理解することが重要です。税理士への相談も慎重に検討しましょう。
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