不動産は、購入時の価格がそのまま将来も続くわけではありません。時間経過とともに価値が下がるため、その減少分を費用として計上するのが「減価償却費」です。しかし、誤って計上してしまうと、納税額が増えたり、ペナルティを受けたりする可能性もあります。この記事では、不動産の減価償却費の概要や具体的な計算方法、注意点を解説します。
不動産の減価償却費の概要
減価償却費とは、建物や設備のような固定資産の価値減少を、会計上で費用として処理するものです。例えば、2,500万円でマンションを購入した場合、購入時に全額を費用計上すると、その年の経費が大きく膨らんでしまいます。しかし、毎年一定額を少しずつ費用計上していけば、資産価値の減少を反映させられます。具体的には、以下のような効果が期待できます。
- 損益計算書の経費計上
- 資産価値の可視化
財務状況を正確に把握し、健全な経営を行うために重要な役割を果たすための制度が、減価償却費です。
不動産の減価償却の対象と計算方法
不動産の価値は時間とともに変化します。減価償却は、こうした不動産の価値減少を適切に計上するための会計上の仕組みです。ここでは、不動産の減価償却の対象となる資産と具体的な計算方法を詳しく解説します。
減価償却の対象となる不動産
減価償却の対象となる不動産は、建物や構築物のような有形固定資産を指します。具体的には以下のようなものが該当します。
- 建物
- 付属設備(空調設備や昇降機など)
- 建物に付随する構築物(フェンスや門扉など)
一方で、土地自体は、対象にはなりません。土地は永久的な資産とみなされるためです。対象となる不動産であれば、事業用や賃貸用を問わず適用されます。
減価償却費に必要な要素
不動産の減価償却費を正確に計算するためには、以下の3つの要素を把握しなければなりません。
取得価額 |
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耐用年数 |
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償却方法 |
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耐用年数に関しては、法改正により変更される場合があります。最新の情報に関しては、国税庁の「主な減価償却資産の耐用年数表」で確認してください。
- 減価償却費の計算方法
減価償却費の計算方法は、主に以下の2つがあります。
項目 | 概要 | 計算式 |
定額法 | 毎年一定額の減価償却費を計上する方法 | 減価償却費=(取得価額÷償却率)×耐用年数 |
定率法 | 減価償却費が毎年減少していく方法 | 減価償却費=未償却残高×定率法の償却率 |
定率法に関しては、平成28年度税制改正で不動産への定率法の適用が原則廃止されました。また、平成19年3月31日以前に取得した不動産には「旧定額法」の特例が設けられているため、注意してください。詳細は、国税庁のホームページで確認してください。わかりやすいように具体的な例を用いて、定額法と定率法の違いをみてみましょう。
例:法定耐用年数47年のRC造マンションを5,000万円で購入した場合
定額法の場合 | 定率法の場合 |
償却率:100÷47=0.0213
減価償却費:5,000万円×0.0213=106万5,000円 |
1年目:5,000万円×(47×2÷100)=470万円
2年目:4,530万円×(47×2÷100)=446万1,000円 … 47年目:106万5,000円×(47×2÷100)=106万5,000円 |
減価償却費は、税金計算に影響する重要な項目です。誤った処理をしてしまうと、損失を被ってしまう可能性もあるため、専門家に相談するようにして、正しい処理を心がけましょう。
不動産の減価償却費の注意点
不動産の減価償却費は、建物の価値減少を按分して経費として計上する制度ですが、誤って運用しているのを税務署に指摘されると、過少申告加算税がかかる場合があります。ここでは、間違いの多い注意点を4つ紹介します。
土地は減価償却対象外
不動産の中でも、減価償却の対象となるのは建物のみであり、土地は含まれません。これは、建物は経年劣化で価値が減少していくのに対し、土地は基本的に価値が減少しないという考えに基づいています。
中古物件の減価償却
中古物件を取得する場合も減価償却は可能ですが、取得価額から既に償却済みの部分を経年数に応じて按分して控除する必要があります。そのため、新築物件よりも計算が複雑になるため、税理士のような専門家への相談をおすすめします。
不動産の用途を変更した場合
住宅用から事務所用のように、不動産の用途を変更した場合、減価償却費の計算方法が変わる可能性があります。これは、法人と個人事業主で適用される償却方法が異なるためです。用途変更後は、改めて計算方法を確認しましょう。
法人と個人事業主での違い
減価償却費の計上に関しては、法人と個人事業主でルールが異なります。法人の場合は減価償却を行うかどうかが任意であり、全額や一部計上のような選択も可能です。一方、個人事業主は原則として取得した資産は、法定耐用年数に基づき減価償却を行わなければなりません。
まとめ
建物は時間の経過とともに価値が下がるため、その減少分を費用として計上できるのが「減価償却費」です。これは、建物の取得価額を一定期間にわたって費用計上して、財務状況をより正確に把握できる仕組みです。減価償却費の計算方法は、法人と個人事業主で異なり、中古物件の場合も変わるため、注意が必要です。また、不動産の種類によっても耐用年数が異なるため、確認しなければならないことがたくさんあります。不安や疑問を感じた場合は、税理士のような専門家に相談しましょう。
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