親が亡くなったとき、悲しみのなかでもやらなくてはならないことの一つが相続手続きです。相続申告は親が亡くなった日から10か月以内に行わないといけません。10か月というと長く感じますが、相続以外にもやるべき手続きがたくさんあることを考えると、あっという間に時間は過ぎていきます。
本記事では、初めて相続手続きを行う方に向けて、親の相続手続きの基本的な流れと基礎知識をわかりやすく説明します。
親が遺言を遺していたらやるべきこと
まず相続手続きの前に行うのが、相続財産の調査と評価です。親が残した不動産、預金、株式、借金など、すべての財産を把握し、財産評価をします。被相続人が遺言やエンディングノートを遺していれば、財産の調査の手間が省けますが、調査が難しい場合は税理士に依頼することをおすすめします。税理士に依頼すれば、調査の段階でどれくらい相続税がかかるかを知ることができます。
遺言書が存在する場合、家庭裁判所でその内容を確認し、検認手続きを行います。相続人が遺言書を勝手に開封してはいけません。検認手続きとは、遺言書の有効性を確認するための手続きです。遺言書には3つの種類があります。
自筆証書遺言
遺言者が自分で全文を書き、自分の名前と日付を記入した上で、押印することで有効となる遺言です。比較的簡単で費用もかからない点がメリットですが、遺言者が保管場所を事前に伝えておかないと、見つけてもらえない可能性が高いです。遺産分割協議を終えた後に遺言を見つけた場合、再度協議をしなくていけません。
秘密証書遺言
遺言の内容を秘密にしたまま遺言を残す方法です。遺言者が自分で作成した文書を封筒に入れて封をし、その封書を公証人と証人の前で提出します。内容を他人にいっさい知られずに遺言を作成できます。
公正証書遺言
公証人が遺言者の意思を確認した上で作成する遺言です。遺言者が口述し、公証人がそれを書き取った後、遺言者と証人がその内容を確認し、署名します。専門家に依頼しているため、検認手続きの必要がなく、遺言執行もスムーズに進むことが多いです。
エンティングノートは遺言のように法的効力はありませんが、被相続人のさまざまな意志や気持ちを遺せるため、遺産分割協議以外の場でも相続人にとって大変参考になる資料です。
相続人の確定とその順位
法定相続人とは、法律で定められた相続権を持つ人のことを指します。配偶者は常に相続人となり、次に子供、その次に親・祖父母、兄弟姉妹の順で相続権が与えられます。
配偶者と子供が相続人となる場合、配偶者が相続財産の半分を受け取り、残りの半分を子供たちが等分に分け合うことが基本です。この配分は遺言書が存在しない場合に適用されます。
遺言書がある場合、その内容に従って相続が行われます。しかし、遺言に示されていた遺産分割の内容とは異なる内容に相続人全員が合意した場合、被相続人の遺言に従う必要はありません。亡くなった人の遺言よりも、これから生きていかなければならない家族の意志が尊重されるのです。
遺産分割協議トラブルの回避ポイント
遺産分割協議とは、相続人全員が集まり、遺産の分配方法について話し合う協議です。ここで合意がスムーズに進まないと、相続手続き全体が遅延する可能性が高くなります。合意が難航しないためには、相続人同士で普段からコミュニケーションをとっておくことが重要です。
遺言書で相続人によって分配される財産が著しく偏っている場合には、遺留分が問題になります。遺留分とは、相続人に最低限保証される相続分のことです。遺言で相続分が極端に少なかった場合でも、相続人は最低ラインの財産を請求する権利があります。
遺産分割協議がまとまらないときは、弁護士のサポートを受けることが多いです。税理士に相続税申告を依頼しているなら、すぐに知り合いの弁護士を紹介してもらえます。
相続人に未成年がいる場合も、遺産分割協議には未成年を含めた相続人全員の同意が必要です。しかし、未成年者は法的行為を自分で行えません。親権者も相続人だと、利益相反が生じるので代理人になれません。
この場合、特別代理人を家庭裁判所に申請して選任する必要があります。特別代理人には弁護士が選ばれることが多いです。
未成年がもうすぐ成人する年齢なら、成人したタイミングで遺産分割協議を行うという方法もあります。
相続税申告と相続放棄の期限
相続税申告は、被相続人が亡くなった日から10か月以内に行う必要があります。
相続税には基礎控除が設けられており、控除額以下の相続財産については税金がかかりません。
3,000万円 + 600万円 × 法定相続人の数=相続財産から控除される金額
相続税が発生しない場合、申告はしなくてもいいのかというと、そうではありません。相続税が発生しなかったことを証明するための申告が必要です。申告を怠ると後日、税務署から問い合わせがくる可能性があります。
被相続人が多額の借金をかかえていた場合、相続人が相続放棄を行うケースが多いです。相続放棄の手続きは被相続人が亡くなった日から3か月以内に行わなければなりません。手続きを行う際には、家庭裁判所に申請する必要があります。3か月を過ぎると、相続を承認したとみなされます。
まとめ
親が亡くなった後にやるべきことは相続手続きだけではありません。お金の話を家族や親族とするのが気まずくて、ほかにやるべきことを優先して後手後手になることもあります。しかし、いざ遺産分割協議をしてみたらスムーズに合意が得られない、被相続人の借金が見つかった、などトラブルが起きることは珍しくありません。そうなると、親の死亡した日から10か月以内というのは短い期間になります。
財産の調査や相続税申告の手間を考えると、税理士に依頼することをおすすめします。初回相談の段階で相続財産の情報を伝えれば、大まかな相続税の金額を試算してもらえ、早い段階で安心感が得られて相続人の精神的負担を減らすことができます。
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