金銭などの財産を無償で受け取った場合、原則として贈与税がかかります。一方で実際に財産の受け渡しがなかった場合にも贈与税がかかるケースがあり、これを「みなし贈与」と呼んでいます。気付かぬうちに発生していることがあり、理解をしていないと思わぬ税負担が発生する可能性があるため、注意が必要です。
この記事では、みなし贈与の概要と、みなし贈与にあたる例、あたらない例を紹介します。贈与税は税率が高く負担が大きくなりがちなため、事前に確認しておきましょう。
みなし贈与とは?
実際に金銭等の財産を贈与されていなくても、実質的に贈与と同様の経済的利益を受けた場合に贈与税が課税される税務上の制度を、みなし贈与と言います。
これは、税負担の公平の見地から課税されるものです。対価を支払わない場合だけでなく、著しく低い価額の対価で利益を受けた場合も含まれます。
特に金銭等の授受が伴わない場合などは、贈与者・受贈者ともに「贈与」である認識がないことがあります。思わぬ贈与税の負担を回避するためには、税務上、どのような場合がみなし贈与にあたるのかを認識しておきましょう。
ただしみなし贈与は明確な基準がなく、個々の例により判断が必要になるため、専門的な知識が求められる面もあり、注意が必要です。
https://www.zeitax.jp/ownersvision/2024/09/25/10millionyen-zouyo-tax/
みなし贈与にあたる例
みなし贈与は「無償」または「著しく低い価額の対価」で利益を受けた時に発生します。このため、第三者との取引ではなく、一般的には親子間、親族間などの取引で発生することがほとんどです。
一般的にみなし贈与にあたる可能性の高い取引を紹介します。
(1)不動産を無償または著しく低い価額で名義変更をした
例えば、無償等で親名義の不動産を子供名義に変更する、夫名義の不動産を妻名義に変更するなどの行為を行うと、みなし贈与と判断されます。
不動産の経済的価値は原則として時価で評価し、評価した金額と実際の取引価格の差額が贈与税の課税対象になります。
ここで著しく低い価額とは何か、税法上は判定基準が明確になっていません。個々の事案に基づいて社会通念に従い判断されます。
なお、不動産については以下の税制優遇があるため、参考にしてください。
国税庁 | 夫婦の間で居住用の不動産を贈与したときの配偶者控除
国税庁 | 直系尊属から住宅取得等資金の贈与を受けた場合の非課税
(2)非上場の株式を無償または著しく低い価額で名義変更をした
例えば、親が経営者・株主として事業をしている企業の株式を、親から子に無償等で名義変更すると、みなし贈与と判断されます。
(1)の不動産と同様に、株式の評価金額と実際の取引価格の差額が贈与税の課税対象です。企業が非上場であれば市場価格がなく、税務上認められた方法で評価することになります。
(3)保険料を支払っていない生命保険の満期保険金を受け取った
例えば、親が保険料を支払っていた保険の満期保険金を子供が受け取った場合、みなし贈与と判断されます。
なお、親が死亡して子が死亡保険金を受け取った場合は相続税の課税対象です。
(4)生命保険の契約者を変更した
例えば、親が契約者の生命保険金の名義を途中で子に変更し、満期時に子が満期保険金を受け取った場合、名義変更前に親が負担していた保険料部分は子に贈与したものと判断されます。保険金を受け取ったタイミングで贈与税の課税対象となるため、注意が必要です。
(5)債務を免除した
例えば、親が子に1,000万円を貸したものの、後日やはり返済不要とした場合は、みなし贈与とみなされる可能性があります。親子間などでは安易に免除してしまうケースもあるかもしれませんが、贈与になる可能性がある点に注意が必要です。
ただし後に紹介しますが、金銭を渡しても生活費等であるなど、みなし贈与の対象にならないケースもあります。
(6)資金移動
何かの理由でまとまった理由の金銭を移動した場合、理由を明確にしておかないと贈与とみなされる可能性があります。贈与ではない旨を明確にするため、貸し付ける、預けるなどの内容を文面で明確に残しておくことが大切です。
みなし贈与にあたらない例
みなし贈与にはあたらない例を紹介します。
生活費や教育費の贈与
夫が配偶者に、親が子供に、など親族間で生活費や教育費などを渡す場合は、贈与税の対象にはなりません。ただし、社会通念上妥当な金額であることが必要です。
例えば10年分の教育資金や生活費という名目でまとまった金額を渡すと、贈与税の対象となる可能性があるため注意が必要です。
債務を弁済するのが困難等な場合
資金がなく債務を弁済するのが困難な方が、扶養義務者から弁済のために贈与されたものは贈与税の課税対象となりません(相続税法第9条但し書き)。ただし判断基準が明示されていないため、迷う場合は税理士へ相談がおすすめです。
税務署にバレるのか?
税務署は不動産の所有権移転登記の情報、満期保険金の支払いに関する支払証書など、さまざまなデータを把握しています。
金銭の授受がなく、たとえ当事者がみなし贈与だと気付かなくても、税務調査で指摘される可能性があります。該当する可能性がある場合は、速やかに申告をすることがおすすめです。
まとめ:個別に判断する場面が多い
みなし贈与は、無償等で経済的利益を受けた場合に贈与税が課税される制度です。利益を得たと感じる取引があれば、課税の対象にならないか検討してみましょう。
税法上、数字等での明確な基準が明示されておらず、個別に判断する場面が多くあります。知識に不安がある方、評価の仕方により少しでも節税したい方などは、税理士への相談をおすすめします。
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