マンションの相続税評価額の計算方法とは?税制改正でどう変わる?

不動産

2024年の1月1日から、相続や贈与、遺贈などにより取得した分譲マンションの評価方法が改正されたことを知っているでしょうか。税制が改正された背景には「タワマン節税」が大きく関わっています。従来の評価方法では、タワマン節税による行き過ぎた節税が発生していました。国税庁はそのような状況の解消を図るために、今回の改正を発表しました。そこで今回は、タワマン節税の概要と合わせて、税制改正後の相続税評価額の計算方法も解説します。最新の情報を知ることで、タワマン節税が有効な手段かを判断できるようになるでしょう。

タワマン節税の課題

タワマン節税の課題は何だったのでしょうか。それは、相続税評価額と時価に大きな差が発生していたことでした。国税庁の発表によると、タワーマンションの約65%が「相続税評価額≦時価の半分」の状態になっていたとされています。つまり、マンションの時価が2億円だったとすると、相続税評価額は1億円を下回る状態になっていたということです。そのような状況が発生してしまった原因は、タワマン節税のからくりにありました。からくりが理解できると、タワマン節税に需要がある理由がわかるでしょう。

タワマン節税のからくり

従来、タワーマンションの相続税評価額は建物と土地の価額を合計して計算していました。それぞれの価額の求め方は以下のとおりです。

  • 建物の価額=固定資産税評価額
  • 土地の価額=マンションの敷地面積×敷地権の割合×路線価(※路線価が設定されている場合に限る)

例えば、マンションの条件が以下のようになっていた場合、相続税評価額がいくらになるのかを計算してみましょう。

  • 固定資産税評価額:6,000万円
  • マンションの敷地面積:4,000㎡
  • 敷地権の割合:0.005
  • 補正率:1.0
  • 路線価:60万円

計算式に当てはめると、「土地の価額=4,000㎡×0.005×1.0×60万円=1,200万円」になります。建物の価額の6,000万円と合わせると、マンションの相続税評価額は7,200万円になります。敷地権の割合が一緒だった場合、マンションの1階に住んでいても、30階に住んでいても、評価額は同じです。しかし、高層階になるほど時価は上がる傾向にあるため、高層階に住んでいる方がより節税効果を得られます。マンションの1階部分の時価が1億円、マンションの30階部分の時価が2億円だった場合、1階の方は2,800万円分、30階の方は1.28億円分節税できます。

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税制改正後に新しく設定されたルールとは

税制改正に伴い、相続税評価額を計算する時には「区分所有補正率」を掛け合わせる必要があります。そして、区分所有補正率を求めるにあたり、大事な要素となるのが「評価乖離率」と「評価水準」です。ここでは、それぞれの概要と、新しいルールに則った相続税評価額の計算方法を解説します。実際の数値を当てはめてみると、新しいルールによる影響の大きさをより具体的にイメージできるようになるでしょう。

評価乖離率

区分所有補正率を求めるために、まず評価乖離率を求める必要があります。評価乖離率を求める理由は、相続税評価額が時価から大きく乖離しないようにするためです。評価乖離率を求める式は以下のとおりです。

  • 評価乖離率=①+②+③+④+3.220

①~④の各項目の意味は以下のとおりです。

  • ①=マンションの築年数×△0.033
  • ②=地下を含まないマンションの総階数÷33×0.239
  • ③=評価対象となるマンションの部屋がある階数×0.018
  • ④=敷地持分狭小度(評価対象となるマンションの敷地利用権の面積÷評価対象となるマンションの専有面積)×△1.195

より詳しく知りたい方は、税務署の資料をご確認ください。

評価水準

評価水準は、評価乖離率で求められた結果を基にして計算します。評価水準を求める式は以下のとおりです。

  • 評価水準=1÷評価乖離率

評価水準は、マンションの階数によって相続税評価額に差が生まれないようにするために求める必要があります。

区分所有補正率

評価乖離率と評価水準それぞれの結果を基にして、補正をかけていきます。補正をかけるパターンは、以下の3つに分かれます。

  • 評価水準が0.6を下回っている:従来の相続税評価額<時価の状態になっているため、評価額乖離率に0.6を掛けて補正します。つまり、相続税評価額が少なくとも時価の60%まで引き上がるようにします。
  • 評価水準が0.6以上1以下である:従来の相続税評価額と、時価に大きな乖離は見られないため補正はしません。
  • 評価水準が1を超えている:従来の相続税評価額>時価の状態になっているため、評価乖離率を掛け合わせて、時価まで引き下げるための補正をかけます。

国税庁が用意している、区分所有補正率を求めるためのExcelも積極的に活用しましょう。

相続税評価額の計算方法

以下の条件を満たすマンションでシミュレーションしてみましょう。

改正前の建物の価額 8,000万円
改正前の土地の価額 9,000万円
築年数 3年
総階数 40階
評価対象となるマンションがある階数 15階
敷地利用権の面積 9㎡
専有面積 60㎡

 

これらの数字を当てはめた時の、それぞれの項目の結果は以下のとおりです。

  • 評価乖離率:3.602
  • 評価水準:0.2776
  • 区分所有補正率:2.161

従来の相続税評価額は8,000万円+9,000万円で1.7億円でしたが、改正後の相続税評価額は(8,000万円+9,000万円)×2.161で約3.67億円となります。つまり、相続税評価額は2倍以上に増えるといった結果になりました。

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まとめ

税制改正によって、タワマン節税が受けたインパクトの大きさを感じた人も多いのではないでしょうか。相続税評価額が変われば、節税計画も大きく変わってしまうでしょう。税制も含めて、情報は日々アップデートされているため、少しでも不安を感じたら、税理士や不動産会社などプロに相談することをおすすめします。プロとして、最新情報を踏まえた上で、ベストな選択を提示してくれるでしょう。

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